前世療法 東京|フォレスト前世療法研究所|福岡、長崎、東京および関東一円でのヒプノセラピー、退行催眠や前世療法の講座も
前世療法 東京|フォレスト前世療法研究所|福岡、長崎、東京および関東一円でのヒプノセラピー、退行催眠や前世療法の講座も
吉野物語
第一章
一宇ichiu
目次
はじめに
この本は、私のこの約十二年間の実体験を元にした物語です。文中に出てくる登場人物の名前は全て仮名ですが、今回は非売品で、関係者のみの配布ということでもあり、地名、施設名は実名を使っております。
いきなりですが、前世療法というのをご存知でしょうか。前世療法とは、ご本人が抱えている悩みや問題の、大元の原因を前世までさかのぼって解消していくという手法です。占い師のように、私がクライアントさんの前世を言い当てるのではなくて、ご本人に催眠状態に導いて、思い出していただくという手法です。ですから、とてもリアルで説得力がありますし、悩みの解消にはとても効果が高い手法です。
催眠状態に導くことにより、普段は意識していない潜在意識にアプローチすることができるようになります。その潜在意識のさらに奥底には、前世も含めて過去の記憶が全て存在すると言われています。深い催眠状態の中で、潜在意識の奥底にアプローチして、悩みの原因となっている記憶・トラウマを引き出すことによって、自分でも気づいていない悩みの根本原因を解消することができるのです。前世療法については、前著「三〇〇〇人の前世療法で明らかになった人生の法則」(Amazon)をお読みいただけると幸いです。文中では前世療法のことをセッションという呼び方をしている場合もあります。
私はこの二十年間で、前著を書いたときからさらに進み、約三五〇〇人のクライアントさんのセッションを行って参りました。その中で、十年ほど前から六五〇年前のある出来事がクローズアップされてきたのです。六五〇年前というと南北朝時代のことです。結論から言うと、六五〇年前に大切なものを封印したようなのです。なぜ封印する必要があったのか。それを悪用されると大変なことになる可能性があったからです。それを防ぐために沢山の命が犠牲になることを承知で、封印せざるを得なかったようです。
その事実が、前世療法の中で沢山のクライアントさんの深い記憶から出てきたのです。その当時の巫女や神官、山伏達の記憶がよみがえってきたのです。それが一人や二人の記憶であるならば、それほど気にはしないのですが、見も知らない数十人のクライアントさんから同じような内容が出てくるとなると、そこに何かがあると思わざるを得ません。
南北朝時代とは、後醍醐天皇による建武の新政の崩壊を受けて、足利尊氏が新たに光明天皇(北朝側)を擁立したのに対抗して、京都を脱出した後醍醐天皇(南朝側)が吉野行宮に遷った一三三六年(延元元年/建武三年)から、後亀山天皇が京都にもどり南北朝が合体した一三九二年(元中九/明徳三年)までの五七年間、吉野の南朝(大覚寺統)と、足利氏の擁立する京都の北朝(持明院統)とが対立して争った時代です。
学校の教科書にはこの程度の記載しかなく、南北朝が互いの権力争いのために、全国を約六〇年間も戦乱に陥れた、という程度の理解でしかありませんでした。しかし、クライアントの前世の記憶や、ネットでの様々な情報を勘案すると、単なる権力争いでは片付けられない側面がありそうなのです。
北朝の本来の目的が何だったのか。ただ権力が欲しかっただけなのか。そういう単純なものではなく、一部の人が持つ高次元のエネルギー、霊的力、それを使うためのツール(三種の神器など)を手に入れるため。そして、自らが地上の神となるための画策であったことが伺えるのです。
このように書くと、単なる絵空事、空想の物語のように思われますが、少なくとも当時の一部の人たちはそれを信じ、実際に奪うための行動を起こし、沢山の犠牲者を出したようです。過去の世界中の多くの権力者が同じようなことを行っています。
そして、そういう高次元のエネルギーは実際に存在し、当時の一部の人たちは、それを世のために使っていたようです。しかしそのエネルギーが悪用されるとなると話は別です。日本が、いや地球そのものが大変なことになりかねません。それは阻止しなければいけません。そのために、封印せざるを得なかったようです。封印されたことによって、そういう事実は無かったことになり、非科学的な空想や、単なるお伽話として片付けられることになってしまったのかもしれません。
しかし、その事実や記憶がクライアント達の中から出てきたり、実際に現実として現象が起きたり、物的証拠が出てきたりすると、信じざるを得ないのです。
歴史の裏にどのような事実が隠れていたのか。そこに関わった人々が、どのような思いで、どのような運命をたどったのか。そして、その前世の影響で今の人生をどのように送っていたのか。その時代に関わった巫女や神官、山伏の前世の記憶を通じて明らかになった事実や、過去の出来事が明らかになるに従って、現実世界で実際に起きた出来事を絡めて書き記しています。
しかし、この事実を公表することに対して、強い恐怖心と迷いがありました。今まで悪用されないように伏せられていた事実ですので、また悪用されるのではないかという恐怖心があったのです。
しかし、今この事実が明らかになったと言うことは、この事実を公表する時に来ているのかもしれません。公表することで、逆に悪用を防ぐことになるのではないか、さらには皆様が本来の光に満たされるのではないかという事を期待して、勇気を出して公表することにいたしました。
この物語は、前世療法の中でクライアントから出てきた記憶やメッセージ、実際に起きた現象、私の実体験をそのまま本にまとめています。個人のお名前や、公表できない地名や施設に関しては、仮名を使っていますが、出来事やストーリーに関しては全て事実です。
また、同じ出来事でも視点を変えれば違う意味合いが見えてくるものです。立場や状況によって、捉え方や思い込みや正義までも違ってきす。この物語は、あくまでも私側の視点から見たものです。どうかその辺をご理解の上、お読みいただければ幸いです。
信じるかどうかは読者の皆様にお任せいたします。
➀謎の始まり
節分の朝のメッセージ
節分の朝、いつものように目覚めました。しかし、その日は何か少し違う感覚があります。ふとある感覚がよみがえってきました。
「あ、俺は何か大切なものを封印をした。自分自身にも封印をしている。これを解かなくてはいけない」
とても変な感覚です。しかし、確信に満ちた感覚でもあります。
「これって何だろう。初めての感覚だ。しかし、間違いなさそうな感じもする」 その日から私は、自分の中を探り始めました。いわゆる内観です。
ちなみに私は、二十年前から前世療法のセラピストをやっています。その節分の体験の時はすでにセラピストとして十年のキャリアがありました。ですから、内観(自分の内面を見つめ奥底にある思考や感情を明らかにすること)は得意です。しかし、今回は少し違います。何もわからないのです。自分の奥底に、深い穴のようなものがあって、その穴の底には蓋がしてあるような感覚。その蓋の奥には、何かとてつもないものが隠れている感覚はあるのですが、その蓋が開かない。
二ヶ月ほど、その蓋と格闘しましたが、結局何もわかりません。「何もわからん。まあ、そのうちわかるだろ。」と、諦めてしまいました。
それから半年後、前世療法にあるクライアントさんが相談に来ました。川島さんといいます。二十代後半の女性です。彼女は、人間関係で悩んでらっしゃいます。その問題は、一回のセッションでほぼ解消しましたが、彼女のことがなぜかとても気になって、「もう一度おいで」と言ってしまいました。クライアントさんに私から「もう一度おいで」と言ったのは初めてです。
それから二ヶ月後、彼女はやってきました。前回来た時に比べて、明るい表情に変わっていて一安心です。そしてまた、前世に誘導していきました。二つの前世が明らかになって、そろそろ終わろうとした時に、彼女の口を借りて、別の人格がしゃべり始めました。
「あなたに伝えたいことがあります」と言うのです。
それは明らかに、高次元の存在でした。そういう時は、部屋の雰囲気が変わり、クライアントさんの雰囲気もがらりと変わるのです。もちろんしゃべり方も変わります。
この十年間、そういうことは度々あったのですが、今回は少し雰囲気が違います。とても高い次元の存在のようです。
その存在が、彼女の口を借りて私にアドバイスをしはじめました。セッションのやり方や、どのような思いであったら良いのか。或いは、これからの世の中の変化など事細かに教えてくれるのです。とても納得のいく内容です。それが一時間ほど続いて、最後に「何か質問はありませんか?」と聞いてきます。私は、いくつかの質問をしました。日頃気になっていたことや、個人的な疑問を質問したのです。とても納得できる答えが返ってきます。
さらに存在は、「他にありませんか?」と聞いてきます。私は「ん・・・?」と、しばらく考えてから「はい、もう大丈夫です。ありがとうございます。」と答えるのですが、存在は「本当にありませんか?」とさらに聞いてきます。
私は、「え?・・・。」と、しばらく考えて「はい。大丈夫です。」と答えると、「あるでしょ?」というのです。
「は?」。この存在は何を言ってるんだろうと、不思議に思っていると、「あなたは、大切なものを封印しましたよね。さらには、自分自身も封印しましたよね。」というのです。
私はビックリして「あ、そうそう!それですそれ!」 私はこの半年間で、節分の日の朝のことを、すっかり忘れていました。それを存在は、何も言っていないのに指摘してきたのです。ビックリして、次の言葉が出てきません。
存在は、戸惑ってる私を気にもせず、「あなたは、六五〇年前に京都のある神社で、あるお坊さんにお願いをして、封印をかけてもらっています。そして、あなた自身も大切なものを封印をしました。それを、今回の人生で解きなさい。」というのです。
唖然としている私を尻目に、存在はさらに続けます。「あなたは、大切なものを石に封印をしました。それを解かなければいけません。そのお坊さんと、その神社に行って解きなさい。」と言うのです。あまりにも唐突なことで、まだ整理がつきません。
私は戸惑いながら「その神社って何処ですか?」と聞くと、「あなたが行こうと思えば、龍が導くから心配はいりません。」と言うのです。今までも、そういう体験はありましたから、おそらく大丈夫だろうと思うのですが、確信は持てません。
「では、そのお坊さんって誰ですか?」と聞くのですが、すでに私には心当たりがありました。「あなたのそばに置いているでしょ?」と存在は言います。
「息子ですか?」「そうです。二人で行きなさい。」「はい・・・。わかりました。」と戸惑いながらも、その時の会話はそれで終わりました。
しばらくして我に返った彼女も、あっけにとられたような表情です。「私、何を喋っていたのでしょう。自分の意識ははっきりしているのですが、別の誰かが私の口を借りて喋ってた感じです。」と整理がつかないような表情です。「そうだよね」と言っている私も、あまりの内容に整理がつきません。さらに私が、「でも、話の内容はとても納得できる。間違いないと思うよ。」と言うと、彼女も「私もよく分かりませんが、何かとても大事なことのような気がします。もし何かわかったら教えてください。」と、つかみどころのない表情です。「何か大切な事が明らかになるような気がする。京都の神社もネットで調べてみるよ。何か解ったら連絡するね。」と、お互い不思議な感覚のまま彼女は帰って行きました。
その後、伝えられたメッセージを何度も咀嚼しました。今までも、沢山の不思議な体験をしてきましたが、今回はとても重要なメッセージのような気がします。もしかしたら、今回私はこのために生まれてきたのかもしれない、という感覚すらあります。
しかし、メッセージの中の神社がわかりません。龍が導くと言われても、何日待っても龍は現れません。ネットで調べても、いくつか神社の候補は上がってくるのですが、ピンと来るものはありません。
数日後、たまたま本屋に立ち寄り、本棚を眺めていると、大きめの写真集が目に留まりました。「日本の神社めぐり」というタイトルです。それを手に取り、本を開いた瞬間「あ!。これ!間違いない!」という感覚が沸き上がってきました。それは、京都の天橋立にある真名井神社でした。
早速家に帰り、ネットで調べると、神社には普通は狛犬がありますが、真名井神社は狛犬ではなく、狛龍だったのです。「龍が導く」のメッセージと一致します。「間違いない」確信が持てました。
一連の流れを、前世で私に封印をかけたかもしれない大学生の息子の眞仁(しんじ)に話すと、眞仁は何の躊躇もなく納得して、その一ヶ月後一泊二日の予定で真名井神社に行きました。変わった親子です。
私達が向かった真名井神社は、元伊勢と呼ばれる籠神社のさらに奥にある小さな神社です。しかし、そのエネルギーはとても清らかで、透き通った清らかな湖の底に、「チャポン」と入っているような、清らかさかギュッと凝縮されたような、初めての感覚です。
小さな本殿の裏には、天照大神と天地創造の神である天御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ)の依代(よりしろ)である大きな石があります。残念ながら、今は禁足地になっています。
そこで、息子が天照大神の前に立ち、私が天御中主大神の前に立ち、二分ほど手を合わせてジッとしていると、「あ、私は封印をしてもらったと言うよりも、正しいエネルギーを正しく使える世になるまでは、使わないと決めたんだ。」という感覚が湧き上がってきたのです。
「これは使わなくてはいけない。もう使える時に来た。これから使っていきます。」という言葉が、自然と口に出て、宣言をしていました。でも、そのエネルギーが一体何なのか、どんな意味があるのかは全くわかりません。しかし、「これから大変なことになるかもしれない。」という感覚もあります。
その予想は、結局当たることになりました。その日から、不思議な出来事が、怒涛のように起きてきたのです。
姪(紘美)のセッション
それから半年後のことです、関西にいる姪から、セッションを受けたいという電話がかかってきました。私は九州ですから、関西の姪とはあまり交流がありません。しかし、その電話の声を聞いた瞬間、「あ、私の後を継ぐ者が来た。」という感覚が湧き上がってきました。なぜだか自分でもよくわかりません。
姪は、子供の頃からパニック障害で、学生時代まで電車に一人で乗ることができませんでした。夜も、急に恐怖心が襲ってきたり、過呼吸になったりするのです。それをどうにかして欲しいということで、セッションの申し込みをしてきました。
申し込みから一ヶ月後、姪がやってきました。数年ぶりの再会です。
セッションの前にまず食事です。食事中、いろいろ話をしていると、紘美が「昨日不思議な夢を見たの。私が山道の中で兄ちゃんを待っている感覚。それも不安で不安で…。」と心細げに言います。姪は私のことを兄ちゃんと呼びます。そして、私は姪のことを紘美と呼びます。
さらに紘美は「兄ちゃんと会わなければ、取り返しのつかないことが起こりそうで、何か伝えなくちゃいけない、という感覚があるの。でも、使いの者がやってきて、もうあの人とは会えない、と言うの。それを聞いた瞬間、絶望感で泣き崩れてしまった。」と、今にも泣き出しそうな顔で話をします。
「そのあとどうなった感じ?」と私が聞くと、「よくわからない。でも、大変なことになったような気がする。私も、あんなにリアルな夢を見たのは初めて。」「わかった。詳しいことはセッションの中でやっていこう。」 何か、大変な秘密が明らかになりそうで、ワクワク感と不安の中で、レストランを後にしました。
自宅に戻り、さっそく紘美を催眠状態に導き、前世へと誘導しました。そうすると、昨日の夢の場面がありありと出てきたのです。
私 「何が見える?」
紘美「山道の中で兄ちゃんを待っている。何だか切羽詰った感じ。」
催眠状態の中で前世に誘導し質問をすると、その時の場面が映像やイメージや感覚として感じ取れるのです。その感じ方は人それぞれですが、分かりやすく言うと、例えば子供のころのことを思い出しているような感覚の人もいれば、白黒の静止画で出てくる場合もあります。中には、カラーの動画で出てきたり、ごく稀にいかにもその現場にいるように感じる人もいます。
しかし共通するのは、ぼんやりとした映像であっても、その時の感情や感覚がリアルによみがえる場合が多いのです。重要な場面が出てくると、号泣される方もたくさんいらっしゃいます。
紘美にもぼんやりと映像が見えているようです。さらに質問をしていきます。
私 「どんな服を着てる?」
紘美「もともとは良い着物なんだけど、薄汚れた感じ。山道をずっと歩いてきたんだと思う。」
私 「そこまで一人で来た?」
紘美「そうだと思う。どうしても何かを伝えなくてはいけないという感覚。山道の中の石碑のような物があるところ。」
私 「そのあと俺には会えたような気はする?」
紘美「会えなかった。使いの者がいきなり現れて、もう会うことはできないと言うの。予想していたけども、それを聞いた瞬間、絶望感でうずくまってしまった(涙)。」
私 「その使いの者って誰だかわかる?」
紘美「よくわからないけど、兄ちゃんの息子の眞仁(しんじ)かもしれない。山伏か忍者のようで、いきなり目の前に現れてきた。多分隠れてたんだと思う。」
私 「そのあとどうなった?」
紘美「何か大変な事が起きたみたい。しかし、それも仕方なかったような気がする。必要だったのかもしれない。」
私 「何が起きた?」
紘美「具体的にはよくわからない。」
話している紘美の涙が止まりません。当時の感情が沸き上がってきているようです。
さらに、「それは今から何年ぐらい前の話?」と聞くと、「六五〇年ぐらい前」と言うのです。六五〇年前といえば一年前のセッションで、高次元の存在が私に伝えてくれた時期と同じです。六五〇年前、一体何があったのか。それ以上のことを紘美に聞いても何も出てきません。まだ明らかにしてはいけないのかもしれません。
六五〇年前といえば、南北朝時代です。皇室が南と北にわかれて争っていた時代です。しかし、私は日本史に疎く、詳しいことはよくわかりません。でも、その時に歴史に埋もれた何かが起きていたようです。
私も胸がザワザワする。私の心の奥底の何かが反応し始めている。奥底にある怒りや悲しみや、恐怖心や罪悪感のようなものが、蠢いているような気がする。
紘美の乳母(恵美)との出会い
紘美のセッションの二ヶ月後、大阪でセッションと講演会をすることになりました。
大阪に来た当日の夜、紘美の親友の恵美に会うことができました。
しかし、恵美は私と会った瞬間、挨拶もそこそこにいきなり泣き崩れるのです。「ごめんなさい。ごめんなさい。私、おじさんに謝らなくちゃいけない。ごめんなさい、ごめんなさい。」と、言葉にならないほど泣き崩れます。
みんなビックリしている中、「何を謝りたいの?」と聞くと、「わからない。わからないけど謝らなくてはいけない。」と繰り返すだけです。そこで、恵美をそのまま前世に誘導しました。そうすると、六五〇年前に私から「紘美を絶対に守り通せ、と命令を受けていたのに、敵方に奪われてしまった。だから、謝らなくちゃいけないとずっと思ってたの。」と言います。
私 「なぜ紘美は奪われてしまった?」
恵美「紘美は私たちにとってとても重要な存在で、敵方も紘美を利用したかったのか、人質に取りたかったのかよくわからないけど、ずっと狙われてたみたい。だから、おじさんに紘美を絶対に守るように命令されてたの。本当にごめんなさい。(涙)」
私 「恵美は紘美とどんな関係だった?」
恵美「紘美のお世話係というか、乳母というか、そんな感じです。」
私 「紘美は身分が高かったの?」
恵美「そうです。身分も高いし、特別な存在でした。」
私 「じゃあ、私はどんな立場だった?」
私自身のその時代の前世の記憶は、どういうわけか私からは出てきません。
恵美「おじさんも、とても身分の高い人で、めったに会えるような人ではありませんでした。」
私 「わかった。ところで、紘美は敵に捕まってそのあとどうなったみたい?」
恵美「しばらくして、逃げ出したようです。逃げ出したのか、誰かに助けられたのかよくわかりませんが、数ヶ月後ある場所で紘美が来るのを待っていました。」
私 「どんなところで待っていたの?」
恵美「山道で何か目印があるところです。そこは時々、待ち合わせの目印にしていたところです。何か石碑のようなものがあります。」
私 「恵美はそこでずっと待っていたの?」
恵美「私も、どこかから逃げてきたようです。着物に焦げた跡があります。火事の中を、逃げてきたような気がします。」
私 「火事があったのはどこ?」
恵美「お寺のような、神社のような建物です。侍が襲ってきて、沢山の人が殺されたような気がする。私は、運良く逃げれました。」
恵美も、その当時の出来事に大きく関わってきたようです。ですから、今回の二人も親友として仲良くしているのでしょう。
予定外のセッションが終わった後、恵美もすっきりしているようでした。
初めての天河弁財天と吉野
大阪セッションでのついでと言ってはなんですが、ついでと言うよりこちらがメインだったのかもしれません。恵美と会って三日後、天河弁財天と吉野に行くことにしていました。
ところで、熊本の幣立神宮という神社をご存知でしょうか。五色人面で有名なところです。黒、白、黄、赤、青の五色の人種のお面がある神社です。オリンピックの五輪のマークと同じです。そのお面はそれぞれの人種の特徴通りに彫られており、さらに黒のお面はアフリカの木、白のお面はヨーロッパの木などと、それぞれの人種が住んでいる土地の木を使ってあるそうです。しかも、それが一体いつからあるかわからないという不思議な神社です。
その神社である人に聞いた言葉がとても気になっていました。それは「表の天河、裏の幣立と言われて、とても重要な神社なんですよ」という言葉です。それがずっと頭に残っていて、幣立神宮には何度も来ていますが、天河弁財天に一度は行ってみたいと、常々思っていたのです。
そこで、大阪セッションの休みの日に、紘美と二人で天河弁財天と吉野に行くことにしました。吉野に行くと言っても、日帰りであまり時間はありませんので、それぞれが一つずつ希望を出して、そこに行くことにしました。ガイドブックを二人で見ながら、私は金峯山寺、紘美は如意輪寺に行きたいということで、計画を立てました。
当日、まず天河弁財天に行きます。本殿の裏にある駐車場に車を止め、車を降りると裏山の小高い丘に山道の跡のようなものと、石碑が見えました。「あれ?紘美がセッションで見ていた場所は、あそこじゃないか?」と尋ねると、「あ!間違いない。あそこで間違いない。」と、ビックリして言うのです。その場所に行って、確認をすると、どうも間違いなさそうです。今は新しい石碑になっていますが、当時も同じところに石碑が建っていたような気がします。
紘美「私、ここから南の方を向いて、兄ちゃんがそっちの方にいるのが何となくわかっていて、会いに行かなくちゃと思ってるんだけども、セッションで出てきたように、この山の中から使いの者が現れて、もう会えないと言ったの。大変なことになると思って絶望感で泣き崩れたのがここ。」と言います。
私 「そうか。ここだったんだ。ここに来ることになってたんだろうね。」
紘美「ここに来なくちゃいけなかったみたい。」
私 「ちょっと待って。恵美が紘美を待っていた場所も、もしかしたらここじゃない?」
紘美「あ、そうかもしれない。恵美に写メを送ってみる。」
私 「うん。それがいい。」
紘美は、何枚かの写メを恵美に送ってみました。しばらくすると、恵美から返事が来ました。「ここ、ここ!間違いない。この石碑の前で待っていた。」
やっぱりそうでした。紘美と恵美が待ち合わせした場所も、私と紘美が待ち合わせした場所も同じ場所でした。しかも、目印としていた石碑も新しくなっているとはいえ残っていたのです。
天川弁財天
その後、天河弁財天の本殿に向かいます。そこに書いてあった説明書きで、この天河弁財天が南北朝時代の南朝の重要拠点であったことを知りました。初めてその事実を知ったのです。やはり、南北朝時代に何かが起きている。それに、私たちも深く関わってるような気がする。自分の奥底にある感情が、また蠢き始めました。
初めての天河弁財天での参拝を済ませ、吉野に向かいます。まず、私が希望した金峯山寺に行きました。日本で奈良の大仏殿に次いで、二番目に大きい木造建築物です。世界遺産にも登録されています。
その本殿に入ると十人ほどの山伏の姿をした人達が、錫杖をじゃらじゃらと鳴らしながら、般若心経を唱えています。その姿を見た瞬間、涙が溢れてきました。
「私は、この情景をまさにこの場所から見ていた。山伏たちが私のために祈ってくれていた。」という感覚が呼び起こされ、涙が止まりません。たくさんの山伏や侍たちが、私を守ってくれてたような気がします。「本当は私が守らなければいけないのに」という感覚が奥底にあるにもかかわらず、そんな私を守ってくれたような気がするのです。
金峯山寺
「やっと帰ってきました。ただいま戻りました。」という言葉が、自然と口から出てきました。
そのあと、如意輪寺に向かいます。しかし、気が進みません。でも、紘美が行きたいと言っているから、連れて行かなくちゃいけないという思いで、車を走らせます。後から聞いた話ですが、紘美も気が進まず、「しかし私が行きたいと言ったから、今更行きたくないとは言えない。」という思いで、渋々助手席に座っていたそうです。
そういう思いの中、如意輪寺に着きました。境内に入ると、その雰囲気に後ずさりをしたくなりそうです。「あ、ここはだめだ。沢山の女の人たちが殺されている。宮中の人か巫女さんが、何十人も殺されてる。」という感覚が襲ってきました。それは紘美も感じていたようです。
とりあえず本堂に手を合わせます。本堂の奥にもお堂があり、なんと南朝を立てた後醍醐天皇の御陵もあるのですが、とても怖くていけません。二人とも早くその場を立ち去りたいのです。しかし、私がトイレに行きたくなり、本堂の隣にあるお土産物屋さんに行ったのですが、鍵がかかって誰もいません。ガラスサッシ越しに中を見ると、土の土間の真ん中に幅二メートルぐらいの地下に続く階段が見えます。しかし、手すりもなにもないのです。「手すりもないところに、あんな階段があれば、落ちる人もいるだろう。危ないな。」と、不思議に思いながら如意輪寺をあとにしました。
大阪に戻り、南北朝のことや金峯山寺や如意輪寺についてネットで調べました。朝廷が、南北にわかれて争っていたこと。戦が絶えなかったことなど、教科書に書いてあるようなことしかわかりません。しかし、記録に残っていない何かが起きているような気がします。
さらに、如意輪寺の階段がとても気になります。お土産物屋さんの写真を探し出したのですが、その写真のどこを見てもあの階段はないのです。確かに私はこの目で見ました。間違いありません。しかし、如意輪寺のホームページや、一般の方のブログに掲載されている写真を見ても、どこにも階段はないのです。狐につままれたような感じです。
後になって、その階段の意味も分かることになりました。
その日から、私の心の奥底から何かが溢れ出してくるのです。怒りや悲しみや、罪悪感や恐怖心のようなものが、湧き上がってきます。とても苦しくて苦しくてたまりません。原因もわからないのです。それが、半年ほど続くことになりました。
宗像大社上高宮での出会い
天河弁財天や吉野での出来事の三ヶ月後、紘美がまた九州にやってきました。そうやって何ヶ月かに一度のペースで、紘美のセッションを行っていました。パニック障害も大分軽くなっているようです。
紘美が九州にやってくると、いろいろな神社に連れて行くのが恒例になっていました。その時は、私のクライアントさんから聞いていた宗像大社の上高宮に行くことにしました。
宗像大社のことはご存じでしょうか。福岡県宗像市にある有名な神社で、日本各地に七千余りある宗像神社、厳島神社、などの宗像三女神をまつる神社の総本社です。宗像三女神人とは 三人姉妹の神様で、長女の田心姫神(たごりひめ)が沖ノ島の沖津宮に、次女の湍津姫神(たぎつひめ)が大島の中津宮に、さらには三女の市杵島姫(いちきしまひめ)が宗像大社に祀られています。そして、この市杵島姫が天川弁財天に祀られている弁財天と同一神と言われています。
宗像大社 高宮斎場
その宗像大社本殿の裏の小高い丘にある高宮は、宗像三女神人降臨の場として有名です。とても清らかなエネルギーで、聖地という言葉がぴったりするところです。しかし、今回はさらにその奥にある上高宮に行くことにしました。数人のクライアントさんから、一度行ってみたらいいですよと言われ、ずっと気になっていた場所です。残念ながら今は禁足地なっているようです。
そこに行くには、人がやっと一人通れるくらいの山道を、十分ほど登っていかなければいけません。
私が先に立って急な山道を登っていきます。息を切らしながら、あと十メートルほどで頂上に着くと言う時に、上の方から鈴の音と笛の音が聞こえてきました。「また何か始まった。」 紘美といると、何かと不思議な事が起きるのです。
頂上に着くと、小さい石の祠の前に髪の長い女の人が、椅子に座って合掌しています。さらにその後ろでは、別の女性が祝詞のようなものを奏上しながら、舞を舞っています。さらにその横では、長いひげの縄文人のような姿をした男性が、鈴や笛を使って伴奏しているのです。そして、さらにその横に付き添いなのでしょうか、男性と女性の方が携帯用のベンチに座ってらっしゃいます。
私は、一瞬戸惑って立ちどまったのですが、付き添いの男性の方が手招きをして招き入れるのです。私たちは戸惑いながら、その様子を二十分ほど拝見させていただきました。
それが終わって、今考えると不躾なのですが「今、何をやっていたのですか?」と聞くと、舞を舞ってた女性の方が、少し言いにくそうに「奉納させていただきました」と言われます。
しかし、奉納というには少し違うような気がしたので、私の前世療法の名刺を出して「私はこういう仕事をしております」と挨拶をすると、安心されたようで「私は園田と言います。実は、巫女開きをしていたのです」と言われるのです。
私 「巫女開きって何ですか?」私も紘美も初めて聞く言葉です。
園田「数百年前に、巫女狩りというものがありました。日本中の巫女さんが殺されたようです。しかも、酷い殺され方をしたようで、その恐怖心を持ったまま生まれ変わってきている人が沢山いるのです。そういう人はパニック障害になってる人が多くて、実はこの彼女もそうなんです。ですから、巫女さんの本来の力を呼び起こすご神事をしていたのです。」
なんだか、すごい話しになってきました。
私 「もしかしてそれって、南北朝時代のことですか?」
園田「よくわかりませんが、その頃の可能性が高いですね。」
私 「確かに、私の前世療法の中でもそういう場面が出てくる方がいらっしゃいます。恐怖心を今に引きずってきている方は沢山いるようです。巫女狩りというのが起きてたんですね。」
園田「前世療法でも出てきてるんですね。やっぱり間違いなさそうですね。」
私 「そういえば、この紘美もパニック障害なんです。しかも前世は巫女です。何度かセッションをするのですが、根本の原因のところに私も関わっているようで、私も過剰反応してしまうんです。私では紘美を完全に癒すのは難しいかと思ってたんです。紘美、せっかくだからお前も、ここでその巫女開きをやってもらってごらん」
そう言うと「申しわけないのですが、すぐに別の予定が入っていて、ここを降りなくてはいけません。」と言われるので、名刺をいただくと、大阪の姪の家から車で十五分くらいの距離に住んでらっしゃいました。
「これは間違いなく御縁だから、大阪に帰ってから連絡を取ったらいい」ということで、その場で別れました。
その数日後、紘美は園田さんと連絡を取り、巫女開きをやってもらったようです。私も、何度か電話でお話をするうちに、「ところで、その巫女開きは誰かに習ったのですか?師匠のような方がいらっしゃるのですか?」と聞くと、「はい。九州にいらっしゃる森さんという方に習いました。」
詳しい住所を聞くと、私の家から車で一時間半ぐらいの距離です。ビックリして、森さんの電話番号をお聞きして、紘美とお会いすることにしました。
森さんとの出会い
その数ヶ月後、森さんとお会いすることができました。彼女は霊能者です。
年齢よりも随分を若く見える綺麗で気さくな方です。いわゆる霊能者というイメージとは随分違う方でした。
ここでも巫女狩りの話が出てきました。彼女は「数百年前に、主要な巫女さんが殺されたようです。それだけならまだしも、巫女さんの魂を抜き取り、石か何かに封印をして、それを湖の底に沈めているみたいです。そういう人が、私のところに何人か来ています。」と言います。
私が「その魂はどうにかならないんですか?」と聞くと、「石に封印をされて湖の底に沈められると、もうどうにもなりません。その石がどこにあるかもわかりませんしね。」といいます。さらに「その巫女さんたちは、もう生まれ変わってきていないか、或いは魂の一部だけで生まれてきてるかもしれませんね。」と言われます。
そういう話をした後、彼女に霊視をしてもらいました。紘美を見た森さんは「あなたはやはり巫女狩りにあってるみたいね。封印もかかっているみたいだから、それもどうにかしなくてはいけないね。」と言われます。
そして私には「あなたは、あなた自身に強力な封印がかかってるから、あなたからは何も出てこないし、私からも見えません。私が知る限り初めての感覚です。しかし、とても重要なことに関わってるみたいです。その封印を解くことで、沢山の巫女さんたちが救われるかもしれません。具体的にどうしたらいいのかは、私にもよくわかりませんが、これから少しずつ紐解けてくるでしょう。」と言うのです。
私 「以前のセッションで、六五〇年前の南北朝のころに大切なものを封印しているというメッセージがあったんですが、それと関係がありますか ?」
森 「どうもその頃のようです。私も歴史には詳しくないのでよくわかりませんが、六五〇年前くらいのような感じがします。」
私 「最近、南北朝にかかわった巫女さんたちが沢山来ていて、何か大切なものを隠して守っていたりとか、戦の場面や巫女さんたちが殺される場面が出てきます。」
森 「やっぱりそうですか。そのころ何かあったんでしょうね。」
私 「しかしさらに詳しく聞こうとすると、みんな“まだ言えない”と言うんです。しかも、全くつながりのない人たちが同じように言うんです。まだ言えない何かがあるんでしょうね。」
森 「まだ言えない・・・。なんでしょう。何か重要なことが隠れてるんでしょう。」
それから、森さんとの深いつき合いが始まることになりました。
さらに紘美のセッション
何度目かの紘美のセッションでの出来事です。
私 「何が見えてる?」
紘美「何が見えていると言うか…。自分の魂を抜いて何かに入れている。」
私 「魂を抜いてる?死んだと言うこと?」
紘美「死んだのとは違う。魂というか、魂の核の部分を自分で抜いている。」
私 「魂の核を抜いて、肉体はどうなるの?死なないの?」
紘美「肉体は死なないみたい。しかし、感情はほとんどなくなってしまう。巫女としての能力もなくなる。」
私 「なぜそうする必要があるの?」
紘美「よくわからないけど、何かを守らなくちゃいけないみたい。そのために必要な処置だった気がする。」
私 「抜いた魂の核はその後どうした?」
紘美「何かに封印をした。黒くて固いもの。黒い石。」
私 「黒い石? 黒曜石?」
紘美「黒曜石。そうかもしれない。黒曜石・・・。」
私 「その黒曜石はその後どうした?」
紘美「竹かごに入れて、どこかに隠した。」
私 「どこに隠したの?」
紘美「よくわからない。」
私 「そのカゴの中には、黒曜石はいくつか入っている?」
紘美「二十個ぐらい入っていると思う。男の人が運んでる感じ。竹かごの隙間から何かが見える。外では何か大変な事が起きている。誰かが石を守ってそこから逃げようとしている感じがする。」
私 「そのあとどこに行ったの?」
紘美「よくわからない。そのあと封印した魂は意識がなくなっていったような気がする。」
森さんの巫女の封印の話と通じるところがありますが、紘美が言うには封印されたのではなく、自ら封印したようです。どうも、封印された魂と、自ら封印をした魂が存在するようです。
紘美や紘美の周りの主要な巫女は、黒曜石に魂の核となる部分を自ら封印したようです。しかし、その目的は何だったのか。なぜそこまでする必要があったのか。なぜ封印された魂と、自ら封印した魂が存在するのか。そして、その黒曜石は一体どこにあるのか。大切なところが全くわかりません。
紘美の姉(美貴)のセッション
紘美には二つ離れた姉がいます。とても仲の良い姉妹です。その美貴もセッションの申し込みをしてきました。
セッションで前世を明らかにしていくうちに、とても重要な記憶が出てきました。彼女も巫女をやっていたのです。しかし、地位はそれほど高くはなく、責任のある立場でもなかったようですが、逆にそれが幸いして、大きなトラブルには巻き込まれず、その時代の出来事を比較的客観的に見ることができていました。あるときの場面です。
私 「何が見えてる?」
美貴「倉庫のようなところを掃除してる。」
私 「誰かと一緒?」
美貴「一人でやってる」
私 「そこはどんな倉庫?」
美貴「倉庫と言うよりは、書庫のような感じ。本がいっぱい置いてある。」
私 「どんな気持ちで掃除をしてるの?」
美貴「正直言って寒いし面倒くさい。しかし、そこで大変なものを見つけてしまったみたい。」
私 「大変なもの?それって何?」
美貴「黒い竹で編んだ篭。書類入れのようなもの。」
私 「なぜそれが大変なの?」
美貴「中に大変なものが入っている。噂で聞いたことがある。とても重要なもの。本当にあるとは思わなかった。見つけてはいけないもの。」
私 「それって何?」
美貴「中身は見てはいけない。とても神聖なもの。黒い竹かごに赤い紐で封がしてある。」
私 「そのあと美貴はどうした?」
美貴「私が見つけたことを知られてはいけない。知られると殺されるかもしれない。」
私 「そんなに大切なものなの。そしてどうしたの?」
美貴「私が見つけたことがバレないように、払ったほこりをまた元に戻して、気づかなかったことにした。」
私 「かごの中には何が入ってるみたい?」
美貴「たぶん、石だと思う。」
私 「もしかして黒曜石?」
美貴「黒曜石・・・。そうかもしれない。中は見てないけどもそんな気がする。とんでもないものを見つけてしまった。怖い。慌てて外に飛び出した。」
私 「そのあとどうした?誰にもバレなかった?」
美貴「ばれなかったけども、怖くて怖くてしょうがない。何ヶ月も隠し通したけども、とても苦しい。ある男の人に、その事を言った。その人に話をしたら殺されると分かっていた。しかし、負担が大きすぎて、死にたかった。殺して欲しかったから、その人に石の事を言ったの。」と苦しそうに話します。
私 「言ってどうなった?」
美貴「思ってた通り、刺し殺された。しかしほっとした。」
しかしその後、石のありかが思わぬところから明らかになりました。竹かごに入れた黒曜石は実際にあったようです。そしてさらに、その竹かごを隠していたお寺が明らかになりました。
ある会社の社長の岡本さんのセッションでの出来事です。
私 「そこはどんな場所ですか?」
岡本「大きなお寺の中のようです」
私 「あなたはそこで何をしていますか?」
岡本「敵が攻めてくるという情報が入りました。準備をしなければいけません。」
私 「戦うのですか?」
岡本「戦うべきなのですが、準備不足でかないそうにありません。巫女さんたちは大切な巻物を燃やしています。」
私 「奪われてはいけないのですか?」
岡本「知られてはいけないもののようです」
私 「そのあとどうしましたか?」
岡本「敵が来ました。ほとんどの所に火が放たれています。巫女さんや尼さんたちも沢山殺されています。」
私 「あなたはどうしましたか?」
岡本「大切な物が入った竹籠を持ってそこから逃げました。」
私 「それは何ですか?」
岡本「よくわかりませんが、命に代えても守らなくてはいけない感じです。」
私 「どこに逃げましたか?」
岡本「よくわかりません。」
明らかに、紘美や美貴の証言と一致します。封印をかけた黒曜石を黒い竹かごに入れ、どこかのお寺の書庫に隠していたようです。
セッションが終わって、今の内容について話をしていくうちに、岡本さんから様々な記憶がよみがえってきました。彼が言うには「あのお寺は多分知っています。金剛寺です。間違いないと思います。多分あそこは南北朝時代に焼き討ちに合っているはずです。私が思い出した場面は、その時のことのような気がします。しかし、あの竹かごを何処に持っていったのかは思い出せません。」
巫女達の証言
その頃、たくさんの南北朝時代の巫女さんがセッションに来ました。それぞれが催眠状態のなかで前世の記憶がよみがえり、興味深い証言をされます。
ある方は、「私は一宇さんから勾玉を預かりました。しかし、それは偽物なんです。一宇さんから、『これは偽物だが本物のようにして守れ』と、命令されたのです。私はそれを持って山奥の神社であたかも本物のように守り続けていました。」と証言されます。
他にも彼女と同じように、ダミーの鏡や剣や巻物を渡された人もいます。それも二十人以上です。
またある方は「一宇さんに命ぜられて、重要な巻物を書き写しました。しかし一部を改ざんするように言われたのです。一番重要な部分です。それを如何にも本物のようにして大事に書庫に保管してました。数ヶ月後、敵が攻めてきました。その敵の前で偽物の巻物を燃やしたのです」
どうして偽物を燃やす必要あるの?と聞くと、「いかにも本物のように見せかけるためです。もし奪われてもそれが本物だと信じさせるためです」
かなりの差し迫った状況だったことが想像できます。
さらには「私は敵方に情報を流してしまいました。ある神社で巫女をしていたのですが、出入りをしていた侍と恋仲になってしまったのです。巫女なのに男女の仲にもなってしまいました。好きで好きでたまらなったのです。
ある時彼が、『今度近隣の神社の巫女が集まって大規模な御神事があると聞いたんだけど、いつ何処であるの?』と聞いてきたんです。私は何の疑いもなく教えてしまいました。そうしたら、当日御神事の場に敵が攻めてきたのです。その先頭に彼がいました。その時初めて彼の目的がわかりました。
彼は、『巫女などいらぬ!』言いながら、私の目の前で次々と巫女を殺していくのです。私も覚悟を決めたのですが、彼は『おまえは情報をくれたから、お前だけは助けてやる』と言うのです。とんでもないことをしてしまった。私だけが生き残るわけにはいきません。私は自分のしたことに耐えきれず、翌日自決しました。こんな私が幸せになってはいけないのです。」
彼女は何度生まれ変わろうが、幸せになってはいけないと過酷な人生を繰り返していました。
まだまだ悲惨な事例は沢山あるのですが、後ほど紹介させていただきます。このような悲惨な出来事、巫女狩りが全国で行われていたようです。
ではなぜそんなことになってしまったのか。当時の一部の巫女は特殊な能力を持っていたようです。
未来の予知や天候をコントロールしたり、人の心を読んだり、様々な術を使っていました。さらには高次元のエネルギーと直に繋がっていたようです。高次元のエネルギーを地球に下ろすアンテナのような役割です。
しかし、それを悪用したがっていた勢力がいました。彼らは、最初はその力を使うためのツール、言ってみれば魔法の杖のような物が欲しくて、それを探していたようです。それが鏡や勾玉や剣のような物だと思っていたのでしょう。いわゆる三種の神器のようなものです。それを手に入れたがっていたようです。しかし、それを奪われ悪用されると、取り返しのつかないことになります。ですからそれを守るために、ダミーを作って守らせたようです。
でも、敵方もいくつかは手に入れたようです。しかし、ツールを使っても何も起こりません。ツールを使える者が必要です。ツールを使える力を持った者、つまり巫女に目をつけ拉致をして強制的に術を使わせようとしたようです。しかし、従うはずがありません。そこで、「従わぬのならば巫女などいらぬ」と、巫女狩りが始まったようです。
さらに、逆に巫女の力が怖くなったのでしょう。「何度生まれ変わろうが、その力を使うな!!」と、残忍な殺し方をして恐怖心を魂に刻み込みました。ですから巫女の生まれ変わりにパニック障害の方が多いようです。自分の本来の姿に戻ることに、とても恐怖を感じてしまうのです。
それは西洋の魔女狩りにも通じるのかもしれません。
祇園神社と大震災
二〇一〇年の年末のある日のことです。霊能者の森さんと、姪の紘美と私の三人で話をしていました。とりとめのない話です。その時、森さんがいきなり「ちょっと待って。ちょっと待って。今神様が話し掛けてきたから、ちょっと待ってね。…。あのね、南阿蘇に祇園神社という神社があるらしいから、そこに行って、宮司をつかまえて何か話しなさい。と神様が言ってるよ。」と言い始めました。
「何それ?」と私が言うと彼女は「私もよくわからん。しかし神様が言ってるから、二人で行ってきて。そこから始まると言ってるよ。」と言うのです。「そこから始まる?もう随分前から始まってると思うけど、一体何が始まるんだろうね。」私たちはきょとんとしながら「わかった。しかし、紘美は明日帰らなくちゃいけないから、今度来た時に行こう。いつぐらいになるかな?」と紘美に聞くと、「二月の下旬か三月の頭には来れると思う」と言います。「じゃあその頃に行くことにしよう」ということで、その時の話は終わりました。
三月三日、紘美はまた九州にやってきました。そして翌日の三月四日に祇園神社に向かいました。宮崎の山奥にある五ヶ瀬村です。あの五色人面で有名な幣立神宮から車で十五分くらいの距離です。幣立神宮は今では全国的に有名ですが、祇園神社のことは初めて聞きました。ネットで写真を見る限り、宮司さんが常駐するような大きな神社ではなさそうです。しかし、「宮司を捕まえて話をしろ」というメッセージですから、行けばどうにかなるのだろうという思いで出発しました。
初春の日差しの中を、車を走らせます。まず幣立神宮にお参りをして、祇園神社に向かいました。祇園神社の中は、参拝客もなく、やはり宮司らしき人も見当たりません。「誰もいないな。宮司さんもいないみたい。」とつぶやきながら、本殿に手を合わせ柏手を打つと、本殿の横の倉庫から作業用のジャンバーを着たおじさんがのっそりと出てきました。
「宮司さんかな?」と思い、「宮司さんですか?」と尋ねると、「はいそうです」と答えられます。しかし、とても失礼なのですが宮司さんには見えないのです。しかし、「宮司を捕まえて何か話をしろ」と言うことなので、何か話さなくてはなりません。
「私たちは南北朝のことをいろいろ調べていまして、その流れの中でここにお伺いしました。」と話しかけると、宮司さんはきょとんとした顔で「南北朝…?」という表情されます。さらに、「当時、とても大変な事が起きていたようで、そのことについていろいろ調べているんです。」と聞くと、さらに宮司さんは困り果てたような表情で、「は?…?」と答えるだけです。
場所を間違えたのかな。と思い「ここは祇園神社ですよね?」「はいそうですが。」「宮司さんですよね?」「はい…。」と言われます。場所も間違ってはなさそうです。
しばらくの沈黙の後、宮司さんが「そういえば、三年ほど前から不思議な人が沢山ここに来るようになって、その人たちが言うには、この神社には沢山の神様が降りてきてらっしゃると言われるのですが、あなたにはわかりますか?」と聞かれます。私は「いえ、私にはそういうものわかりません。」と言うとさらに「実は三年前から、十二支の神様がここに降りてきてて、ここにはねずみさんが」と言いながら、本殿の床のシミを指すのです。「あ、確かにねずみさんですね」と言うと「そうでしょう。こっちには牛さんが」と指差す先には、確かに牛の形をしたシミがあります。そうやって、十二支のシミを一つ一つ説明するのですが、馬のあたりからどう見てもその形には見えないのです。ただ「はい確かに」と答えるしかありません。
「この人、ただ不思議大好きなおじさんとしか思えないんだけど、この宮司さんから一体何を聞き出せと言うんだろ。」とだんだん自信がなくなってきました。
そうしてる間にも、宮司さんの話は続きます。参拝客が写したという不思議な光の写真や、本殿の外壁のシミを小一時間話し続けるのです。
やっと満足されたのか、思い出したように「どうぞ上に上がりませんか。」と本殿の上に上げてくれました。そして私に「祝詞でもあげてみたらどうですか。そしたら何かわかるかもしれませんね。」と言われるのですが、「祝詞集がないとできないんです。今日は忘れてしまってて。」と言うと、「じゃあ、私が上げてあげましょうね」と、祝詞の奏上をしてくれました。宮崎弁なまりの祝詞です。
ところが、奏上が終わり、宮司さんが立ち上がりこちらを振り向いた瞬間、全く別人に変わっているのです。あの頼りなさげな表情とは一変して、威厳のある凛とした顔つきで「たった今、天皇家の封印を解くようにお願いをしました。今から始まります。」と言うのです。それを言い終わった瞬間、元の頼りなさげな宮司に戻りました。
私たちは、その宮司さんの変化にビックリすると同時に、彼のメッセージに驚いたのでした。天皇家にも関わる封印のことだと一言も言ってなかったのです。私たちは今まで、南北朝の時に封印をされた天皇家の秘技や、エネルギーや、それを使うツールや、さらにそれを使っていた巫女さんたちの封印を解くために動いていたのです。
しかし、この宮司さんにはそのことについて一言も言ってませんでした。さらに、「今から始まります」という言葉は森さんが言っていた言葉と同じです。一体これから何が始まるのだろう。
今までも十分いろんな体験をさせられてきたのに、今までは単なる準備段階だったのか。これからが本番なのか。一抹の不安を抱えながら、宮司さんにお礼を言って祇園神社をあとにしました。
それから数日後、三月十日のことです。私は急に強烈な不安感に襲われました。パニック障害ってこんな感じなのかと思うくらいに、恐怖心と悲しさと息苦しさで、黙っておくことができないのです。初めての体験です。何が起きたのかわかりません。
その翌日の三月十一日です。あの大震災と津波がやってきました。あの恐怖心は、無意識のうちに大災害を予知していたのかもしれません。
それから一ヶ月後のある日、また三人で話をしていました。私は森さんに「あの祇園神社での出来事はあれでよかっただろうか?」と聞くと、「よかったみたいですよ」。
さらに私が「あの後、大震災が起きたけども、何か関係あるのだろうか?まさか、私たちがあの宮司さんと話したことで、あんな大変なことが起きると思わないんだけど、よかったらこの前の神様に聞いてもらえるかな?」と言うと、「ちょっと待ってね。聞いてみますね・・・。ん、関係あるって言ってますよ。」「え?」
「もちろん祇園神社の件で地震が起きたわけではないと言ってますよ。犠牲者の皆様には大変お気の毒な出来事でしたけど、今までの日本や地球の、人々の思いやエネルギーのひずみが、修正されて行く一つの出来事だったと言ってます。これから一宇さんたちがやって行くことと、そういう意味で関連があると言うことです。」
エネルギーの歪みの修正の為に、あれ程大きな苦しみが必要だったのか。理不尽さを禁じ得ませんが、今の私には良く解りません。
「私達がやって行くこと」「今から始まります」の言葉が気になります。一体今から何が始まるのか。今までの出来事は単なる準備段階だったのか。期待と不安が入り混じった何ともいえない感覚です。
紘美の封印解放
しばらくの重たい沈黙の後、私から口を開きました。「やはり、沢山の巫女さんたちの魂や能力やエネルギーが封印をかけられている。それを解くには、まず巫女の最後のトップであった紘美の封印を解く必要があるんじゃないか。」と言うと、森さんも「確かにそうかもしれませんね。紘美ちゃんの封印が解ければ、他の巫女さんたちも目を覚まし始めるかもしれません。やってみる価値はありますね。」。
そう言って紘美の方を見ると、あまり乗り気ではなさそうです。少し不機嫌な様子で口を開きました。「私がそういうことをやろうとすると、必ず体調崩してしまう。それも半端じゃない具合の悪さなんです。もうそんな体験は嫌です。ほっといて欲しい。」と、紘美らしくもなくイライラした様子で反論してきます。「しかし、封印が解ければその体調が悪くなることもなくなるだろう。パニック障害も解消すると思うよ。ちょっと勇気を出してやってみたほうがいいと思う。」と言うと、「少し考える」という返事。
気まずい雰囲気の中で、差し障りのない話をするうちに、いきなり紘美が「もうわかった。何だかムカついてきた。封印のせいでなぜ私がこんなに苦しまなくちゃいかんの。もう解いてやる。封印をときます。」といきなり言い出したのです。「では、また日を改めてやることにしよう。その時は、森さんお願いします。」と約束をして、森さんの家をあとにしました。
そして、その年の八月、南朝の巫女さんであっただろう数人と、巫女さんの封印を解く御神事を行いました。まだ夜も明けきらない早朝四時に、浜辺で護摩焚きのような儀式を行い、封印の解放を行いました。その帰り道、不思議な雲が現れました(図参照)。明らかに蛇を剣で斬っているように見えます。
しかし、蛇を切っている剣はどこかで見たことがあります。あの「今から始まります」のメッセージを受けた祇園神社で出てきた雲です。何か意味があるのでしょうか?その後もことあるごとに雲によるメッセージを受けることになりました。
そしてその一週間後、私たちの動きとは関係ないと思いますが、天河弁財天がある天川村で大洪水が起きました。天河弁財天にも水が押し寄せたと噂が入ってきました。とても心配です。
紘美の封印を解いた後に出てきた雲。剣で蛇を切っているように見える。
祇園神社で出てきた雲。祇園神社の御祭神は素戔嗚尊です。上の蛇を切っている剣に似ていないか。これは素戔嗚尊の剣か?
②巫女の供養
土砂に埋もれた禊殿
その一ヶ月後、紘美から電話がかかってきました。「今度の日曜日に、天河弁財天に行ってこようと思う。」と言うのです。しかし紘美は、今までも自分の縁の深い神社に行くと、必ずといっていいほど体調を崩すのです。それが心配で、「大丈夫か?また体調崩したりしないか?」と言うのですが、「大丈夫だと思う。なんだか一人で行かなくてはいけない気がする。」といいます。
その話を、真由さんにメールすると、「紘美さんに見てきて欲しいものがあります。天河弁財天の本殿の南側に、大きな石があるような気がするんです。それを確認してきて欲しいと伝えてください。」という返事が来ました。
この真由さんは、数年前にセッションを受けて、自分が南朝の巫女だった人生を思い出した方です。しかも、重要な場面に立ち会っていたようです。
私は「わかった。私からも伝えるけども、真由さんも直接紘美に伝えたら?」と返事を送りました。
その日曜日、紘美は一人でバスを乗り継ぎ、天河弁財天に向かいました。途中、土石流の後も生々しかったそうです。天河弁財天の社務所なども水没したそうですが、紘美が行った日には、以前の姿を取り戻しつつあるようでした。
本殿に上がり、参拝をしていると、少し離れたところで参拝を始めた男性がいました。場慣れた感じの人です。「あ、この人なら大きな岩のことをしているかもしれない。」と思い、勇気を出して話し掛けてみました。
「すみません。お伺いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」「はい。いいですよ。」と、少し戸惑ったように返事が返ってきました。
「あの、ここから南の方に、大きな石が祀ってあるようなところはありませんか?」
「大きい石ですか? あっ、たぶん鏡岩のことだと思います。ここから五百メートルぐらい南に行ったところにある禊(みそぎ)殿(でん)というところにあります。先日の洪水で、足元が悪くなってますので、よかったら車で案内しますよ。」
初対面の男性でもあるし、少し戸惑いを感じつつも、彼に案内をしてもらうことにしました。その禊殿に着くと、まだ洪水の後も生々しく、境内は二メートル程の土砂に埋まり、土石流で流されてきたであろう自動車ほどの石がゴロゴロとしています。
土砂に埋まった川の向こうに、その鏡岩が見えます。その鏡岩を見た瞬間、紘美の奥底で何かがざわめくのを感じました。
紘美はその場から、土砂に埋まった風景を写メで私に送ってくれました。
「ここは禊殿というところで、先日の洪水で埋まってしまったんだって。真由ちゃんが言っていたのは、川向こうに写っている六角形の岩のことじゃないかな?鏡岩って言うらしい。」というメッセージが添えられています。
私はその写メを見た瞬間、「あそこが埋まってしまった…。」という感覚が湧き上がり、涙が溢れてきました。「なぜあそこが…。」という感情が湧き上がるのですが、禊殿や鏡岩のことなど、今まで全く知らなかったのです。初めて聞いた言葉だし、初めて見た風景です。しかし、感情が揺さぶられるのです。先日、金峯山寺で山伏達の姿を見たときの感覚と似ています。いったい何なのでしょう。
現在の禊殿
その日の夜、無事に帰ってきた紘美から電話がかかってきました。
紘美「あの写メ見てどうだった?」
私 「なんだか見覚えがある。あそこがあんなことになるなんて…。という感じ。涙が出てくる。」
紘美「そうだよね。私も同じ。何だか苦しくて苦しくて。」
私 「あそこはとても重要な場所のような気がする。」
その感覚は後ほど当たることになりました。
天河弁財天の巫女
同じ年の二月の話です。福岡で行った講演会に三十代後半の女性がおいでになりました。講演会終了後、彼女からセッションの予約が入ってきました。電話を受けた瞬間、「あ、この人は天河弁財天の巫女さんだったに間違いない。しかも、巫女狩りにあってるような気がする。」というイメージが入ってきました。案の定、彼女はパニック障害だったのです。
予約の電話から二週間後、彼女がやってきました。青木さんとおっしゃいます。セッションを始める前に少し雑談をしました。
私 「青木さんは天河弁財天って知らない?」
青木「はい、知ってます。」
私 「やっぱりね。」
青木「どうしてやっぱりなんですか?」
私 「最初に電話でお話した時に、天河弁財天と縁が深い人だなという感じがしたんですよ。ところで、天河弁財天には行ったことありますか?」
青木「もう随分前ですが、短大の卒業旅行で行ったんです。」
私 「短大の卒業旅行?なぜ卒業旅行で?しかも二十歳そこそこの短大生なのに。」
青木「変でしょう?私も変だと思います。ある雑誌を見ていた時に、後ろのページの下の方に十センチぐらいの枠で天河弁財天の事が載っていたんです。それを見た瞬間、ここに行きたい!と思ったんです。」
私 「やっぱりご縁があるんだね。ところで、誰か一緒につき合ってくれたの?」
青木「誰もつき合ってくれないんです。今考えれば、短大生があんな山奥の神社に行きたいと思いませんよね。」
私 「そうだよね。それで一人で行ったの?」
青木「みんなから断られている私を見て、可哀想に思ったのか、一人の友人がつき合ってくれました。」
私 「それはよかったね。優しい友達だ。」
青木「本当にそうです。でも友達は楽しくなかったかもしれません。」
私 「それで、天河弁財天はどうだった?」
青木「大阪からレンタカーを借りて行ったんですが、すごい雪で、怖くて途中で車を停めて、結局バスで行ったんです。」
私 「卒業旅行だから真冬だよね。あの辺りは雪が深かったでしょう。」
青木「はい。あんなに積もってると思いませんでした。」
私 「無事に天河弁財天には着いたの?」
青木「はい。どうにかたどり着きました。ちょうど節分祭の時だったんです。それが目当てで行ったんですけどね。」
私 「節分祭?どんなことをやるの?」
青木「いろんな御神事があって、私にはよくわからないんですが…。本殿での御神事とか、境内での護摩焚きとか、三日ほどかけていろんな御神事があったみたいです。鬼の宿という御神事も参加さしてもらいました。」
私 「鬼の宿?」
青木「節分の前の日の夜に、鬼をお迎えする御神事だそうです。」
私 「鬼をお迎えするの?」
青木「私も不思議に思ったんですが、天河弁財天では鬼は神様なのだそうです。ですから、前の日の夜にお座敷にお布団を敷いて、そこで一晩休んでもらうんだそうです。何だかとても神秘的な御神事でしたよ。」
やはり彼女は、天河弁財天と深いご縁のある方のようです。二十歳そこそこの女子大生がわざわざ真冬の天河まで行こうとは思わないでしょう。
しかし、節分祭という言葉が気にかかります。何か引っ掛かるのです。そういえば、二ヶ月ほど前に来られたクライアントさんの口からも、天河弁財天の節分祭の話が出ていました。何か気になります。
雑談が長くなってしまいましたが、本来のセッションに戻りました。まず、セッションを受ける動機から聞いていきます。
そうすると彼女は、先程までの可愛らしい笑顔は消えて「人が怖いんです。どう接して良いかわからないんです。人のちょっとした態度や言葉、過剰に傷ついてしまうんです。」と言われます。
「それは大変でしたね。前世で何か辛いことがあったのかもしれませんね。それを解消すると楽になるはずですよ。」
一時間ほどのカウンセリングの後、前世に誘導しました。そうすると、中世ヨーロッパの魔女狩りの場面が出てきました。彼女は教会のシスターでした。しかし、教会の教えに疑問を感じ、真実を知りたがっていたのです。教会の図書館に行っては本を読み漁るのですが疑問は消えません。
ある時、本の後ろに小さい隠し扉があることに気づきました。そこを開くと、古ぼけた小さい本が隠してあるのを見つけました。何か大切なもののようです。恐る恐るその本を手に取り、誰にも気づかれないように自分の部屋に持って帰りました。ろうそくの灯りを頼りに、その本を読むのですが、衝撃的な内容に我を忘れて一気に読み終えました。そこには、教会の教えとは全く違う真実が書いてあったのです。
「これは皆に伝えなくてはいけない。でも、この本のことを知られると、殺されるかもしれない」と、正義感と恐怖心に戸惑いました。しかし、衝動を抑えることができず、一番信頼している市場の友人にその本を見せたのです。友人は感動して、「これは広めなくてはいけない」と言って、本を書き写しました。そうやって、少しずつ写本が広がり、沢山の人の目に留まるようになったのです。
しかし、そのことが教会の知るところとなり、犯人探しが始まりました。沢山の写本が押収されて、広場で燃やされます。そして、彼女とその友人と、さらに数名の人が処刑されてしまったのです。
彼女は、友人たちが処刑されたのは自分のせいだと思い、自分を責め続けて亡くなっていたのでした。その恐怖心と、自責の念を今回の人生に引きずってきていたのです。彼女の前世の魂の癒しをすることで、恐怖心や罪悪感が随分癒されたようです。
私 「魔女狩りにあってたんだ。本当に怖かったよね。」
青木「そうだったみたいです。だから人が怖かったんですね。納得できます。」
私 「自分のせいでと思っていたなら、幸せになってはいけないような感覚もあったでしょう。」
青木「本当にそうです。幸せなる資格はないような感覚がずっとありました。そういうことだったんですね。」
私 「ところで、あの本には、どんなことが書いてあったの?」
青木「セッションの中では、よくわかりませんでした。でも、そんなに難しいことではなかったような気がします。とてもシンプルなのですが、大切なことが書かれてあったような気がします。」
私 「誰が書いたのかわかる?」
青木「前世の先生が書いたんじゃないですか?今書いている本と同じじゃないんですか?」
私 「え?俺が?」
青木「そんな気がしますよ。」
確かに、ちょうどその時、青木さんが来た講演会の内容を本にまとめている最中でした。そのことを、講演会でも話をしていたようです。それが、青木さんの先入観になっていたのかもしれませんが、また同じ本を書こうとしていたのかもしれません。その本はすでに「三〇〇〇人の前世療法で見えてきた人生の法則」として出版しています。
一度目のセッションは、それで終了しました。
数週間後、二度目のセッションを行いました。随分落ち着いた様子です。
一度目のセッションの後の変化を聞きながら、しばらく雑談をしていると、また彼女が天河弁財天の話を始めました。
「実は、東北大震災の一週間ほど前に、テレビで熊野古道の特集番組があったんです。その時は見る時間がなくて、録画していたんですが、あの大震災があって、録画していたこともすっかり忘れていたんです。それを一昨日思い出して見たんですが、天河弁財天の節分祭が長い時間を割いて流されているんです。この前あんな話をしていたから、ちょっとビックリしました。」と彼女がうれしそうに話しをします。
「節分祭の場面が録画されているの?」と、聞き返すと「そうなんです。一時間半ぐらいの番組の約半分が天河弁財天のことでした。」
「そうなんだ。それDVDに落としてもらえないかな?」と言うと、「そう言われると思いました。今度持ってきますね。」と約束をしてくれました。
しばらくの雑談の後、セッションに入ってきます。
前世に誘導していくと、やはり、思っていた通りに巫女の場面が出てきました。間違いなく天河弁財天の巫女です。周辺から集められた巫女たちが、お寺の半地下のようなところに閉じ込められて、殺された場面が出てきます。数十人、いや百人以上の巫女たちです。理由もわからず、残忍な殺され方をしたようです。その場面が出てきたのです。
その恐怖心を癒し、魂を救うことで、彼女の恐怖心はなくなり、パニック障害も快方に向かいました。
「本当に怖かったよね。魔女狩りも巫女狩りも両方あっていたなら、パニック障害になっても仕方なかったよね。本当に辛かったね。」と言うと彼女は、「そうだったんですね。心の奥底がずっとザワザワして恐怖心があったんです。でも今は静かで穏やかになりました。ありがとうございました。」と穏やかな表情です。その日彼女は、笑顔でセッションルームをあとにしました。
さらにその数週間後、約束のDVDを持って三度目のセッションにいらっしゃいました。ほとんど、問題は解消していたのですが、アフターフォロー的なセッションになりました。
一時間ほど話をして、今回はとても幸せだった前世へと誘導して、幸せな感覚を思い出していただき、セッションを終了しました。彼女は安心した様子で帰って行かれました。
彼女が帰った後、DVDを見ることにしました。そこには、冬の天河弁財天と、節分祭、熊野古道の映像が映っていました。見たことのない熊野古道の映像に、胸がザワザワします。間違いなく歩いた感覚があります。また、節分祭の映像にも反応している私がいます。息苦しさを感じるのです。
その後彼女からの電話はかかってくることはなくなりました。一安心です。
尚子さんの証言
彼女はプロのミュージシャンでありながら、浄土真宗の僧侶でもあります。彼女は「何か思い出さなくちゃいけないことがあるんです。なぜ私が僧侶になろうと思ったのかと言うのも知りたいんです」という動機でセッションにいらっしゃいました。
早速彼女を前世に誘導しました。そうすると興味深い場面が出てきたのです。
私 「何が見えてますか?」
尚子「広い河原で火を焚いてます。」
私 「あなたはどんな姿をしていますか?」
尚子「白い着物のような、山伏のような姿をしています」
私 「その時のあなたは男性なの?」
尚子「そうみたいです」
私 「火を焚いて何をしているの?」
尚子「お祈りのような、御神事のようなことをしています」
私 「誰かと一緒ですか?」
尚子「山伏のような姿をした人たちが七~八人一列に並んでいます。私はその一番端っこにいます。私たちの前に二人の男性が大切な御神事をしているようです。」
私 「その二人はどんな御神事をしているの?」
尚子「よくわかりません。しかし、とても重要なことのようです。」
私 「そこに今のあなたが知っている人は誰かいますか?」
尚子「前にいる二人のうち一人が一宇さんです。」
私 「私なの?」
尚子「そうです。一宇さんが代表して何かをしています。」
私 「私が代表しているの?。私はそこでどういう立場なの?」
尚子「その組織というかグループというか、もっと大きい組織なんだけども、そこのトップのような感じです。」
相変わらず私からは記憶が出てきません。
私 「そうなんだ…。あなたはそこで何をしているの?」
尚子「一心不乱に祈っています。皆が幸せになるようにとか、平和になるようにとか、純粋な気持ちで祈っています。」
私 「そのあとどうなった?」
尚子「気づいたら周りは火の海になっています。私の体にも火が移っていますが、熱くも怖くもありません。一宇さんが苦痛を感じないように念を送ってくれているようです。」
私 「苦痛はないんだ。良かった。そのあと亡くなった気がする?」
尚子「はい。魂になって上空に登ってきました。そして、下を見たら村中が火の海になっています。焼き討ちにあったようです。そういう状況になっていることを私は全く知りませんでした。皆が幸せになるようにと祈り続けていたのですが、何も役には立っていなかったみたいです。悔しくて悔しくて、辛くてたまりません。(号泣)」
私 「そうか。辛かったね。」
尚子「(号泣)」
彼女は本当に純粋な思いで、みんなのために祈っていたのでしょう。普段の彼女の姿を見てもそれは容易に想像できます。しかし、その思いが成就できなかったことで、いまだに自分を責めているようでした。
私 「本当に辛かったね。」
尚子「はい。(涙)」
私 「そうだよね。・・・。ところで、そこでは何の御神事をしていたの?」
尚子「何か大切なものを封印をしていたようです。」
私 「封印?」また、封印という言葉が出てきました。「何を封印していたの?」
尚子「よくわかりませんが、白い石を使っていたようです。」
私 「白い石を使って何をするの?」
尚子「よくわかりません。私は、もともとこのグループの一員ではなかったようです。しかし、思いが一つだからと急遽仲間に入れてもらった気がします。唱えている呪文というか祝詞のようなものに私は不慣れで、最初は戸惑っていました。」
私 「なぜ、封印する必要があったんだろう?」
尚子「イメージ的には、黒い影が覆いかぶさってきて、あと数秒もすると占領されてしまうような感覚です。」
私 「占領されるとどうなるの?」
尚子「取り返しがつかなくなります。邪悪な者に占領されるような、高潔なものが汚されるような、虚無に覆われるようなそんな感覚です。」
絋美が以前感じていた感覚と同じような感じです。
私 「では、守ることはできたみたい?」
尚子「ぎりぎりのところで守れたようです。しかしそれは、想定外の出来事だったようです。十秒程度で決断をしなければいけない状況だったと思います。ですから、他の巫女さん達とは情報を共有できていないかもしれません。誤解している人達もいることでしょう。でもうまくいって本当によかった。」
私 「その時、私も死んだみたい?」
尚子「一宇さんは助かっています。数人の山伏と一緒にどこかに向かったような気がします。それを私は上空から見てたような気がするんです。良かったと思っています」
確かに、川の向こうから黒い影が、すごい勢いで覆いかぶさってくるイメージが私にもあります。これに占領されると、闇・虚無に占領されてしまう、全てが終わるという感覚です。それを防ぐために大切なものを封印したようです。そしてその時に、私自身にも封印をかけたような気がします。自分に封印をかけることで、封印を確実としたようです。ですから、私からは何の記憶も出てこないのです。
このことを姪の紘美に伝えると、「そのイメージは私にもある。黒い何かに覆いかぶされる感覚。それは絶対に阻止しなければいけないという感じ。多分、兄ちゃんは私達や他の巫女さんたちに、緊急の時はAという手段を使う。もしそれがだめなら‘Aという手段を使うと言うことは伝えていたみたい。しかし、それすらも使えない緊急事態になって、Zという手段を使ったような気がするの。だから、巫女さんたちのなかには、大混乱に陥ったり、裏切られたような気になった人もいたと思う。天河弁財天の裏で私が泣き崩れたのも、そのことを察知したからだと思う。」
また新たな謎が生まれました。私は一体何を封印したのか。何を守ろうとしたのか。なぜそうする必要があったのか。そして、黒曜石と白い石とは何か関係があるのか。謎が深まるばかりです。
しかし、それは南北朝の時に起きた出来事であることは、どうも間違いなさそうです。そして、私もその時代に南朝のメンバーとして、重要なことをやっていたようです。どうもそれも間違いなさそうですが、まだまだ謎は深まるばかりです。
節分祭
紘美が天河弁財天で出会った男性は長峰さんと言います。彼は、天河弁財天とのご縁が深く、宮司さんとも親しい仲でした。その後、長峰さんから紘美に色々な情報が寄せられるようになりました。
ある時、彼から、例の節分祭の話が出てきたのです。彼は毎年、節分祭で奉納する音楽や舞などの演者の手配をしている方でした。その彼から「来年の節分祭に是非おいでになりませんか?」というお誘いがあったと紘美から連絡がきました。
紘美「兄ちゃんもご一緒にという話なんだけどどうしよう」
私 「また節分祭の話か。やたらと多いよね。行けと言うことなのかな?」
紘美「長峰さんが節分祭の奉納の演者の人達のために、民宿を一軒貸し切ってるんだって。そこの二部屋が空いてるから、是非どうぞと言ってるの。」
私 「そうか。行きたい気もするけど、何だか気が重いな。南朝でご縁のあった方々と会うことになりそう。なぜそう思うのかわからないけれど、どんな顔をしたら良いんだろうっていう感じなんだよね。」
これといった根拠はないのですが、あまり気が進みません。
しかし結局、何度ものお誘いに負け、節分祭に行くことになりました。
新大阪でレンタカーを借りて、二度目の天河弁財天に向かいます。真冬ですのでクライアントの青木さんが言ってたように想像以上に雪が積もっていました。
民宿の駐車場に車を停め、玄関を入ると、山伏の姿をした方がいます。一種独特な雰囲気です。本殿に上がり、参拝を済ませ、夜になるのを待ちました。その夜は、青木さんが教えてくれた「鬼の宿」の御神事の日です。
夜になると、続々と人が集まってきます。宮司さんのご自宅で、その御神事が行われます。ろうそくの明かりの中に、二組の布団が敷いてあります。その横で鬼をお迎えするという御神事が始まるのです。薄暗い明かりの中での御神事はとても神秘的で、不思議な感じでした。
翌日も、様々な御神事が執り行われます。午後からは、境内で山伏たちによる護摩炊きが行われました。それを見ていると、苦しくて苦しくて立っているのもやっとの思いです。この情景は、間違いなく見覚えがあります。見覚えがあると言うより、私もやっていたような気がするのです。
その日の真夜中、午前二時から、山伏の月野さんによる正式参拝があるということで、お誘いを受けました。境内の御手洗(みたらい)の龍の口から流れ落ちる水も、完全に氷りつくほどの寒さです。寒さに体を震わせながら、私も紘美と一緒に同席させていただきました。
参拝が進む中、月野さんが迫力のある渋い声で、独特の声明(しょうみょう)を唱えられます。
「天河弁財天に拝み祀る。てんかわべんざいてんに~おろがみまつる~。」と、何度も何度も唱えられます。それを聞いているうちに、また私の奥底が震え始めました。「これは間違いなく聞いたことがある。いつだろう。」 温もりと絶望感のようなものが、ごちゃまぜになったような感覚です。何かが反応するのです。泣きだしたい感覚を押さえるのがやっとでした。
濃密な二泊三日の節分祭を終え、九州に帰ってきました。節分祭での出来事が頭から離れません。特に、月野さんの声明が頭の中で繰り返されるのです。「てんかわべんざいてんに~おろがみまつる~。」何度も何度も繰り返され、とても切なくなります。
数日後、福岡県の宗像市にある、宗像大社にお礼に行くことにしました。天河弁財天の弁天様は、もともと宗像大社の市杵島姫だといわれています。「そうだ、市杵島姫にお礼に行こう」と車を走らせました。あの「巫女開き」の一団と出会った神社です。
本殿に参拝をした後、神様が上ってきたと言われる神湊(こうのみなと)の海岸に車を停め、海を眺めていました。そうすると、またあの声明が頭の中で繰り返されるのです。
「てんかわべんざいてんに~おろがみまつる~。てんかわべんざいてんに~おろがみまつる~。」
その時です。ある映像がはっきりと頭の中に浮かび上がってきました。それは、山伏の姿をした五人連れが、縦に並んで山道を歩いている姿です。その真ん中に間違いなく私がいます。私は、精根尽き果てたように、覇気もなくトボトボと歩いています。そして、私を守るように前後二人ずつではさんで、どこかに向かっています。その先頭の山伏があの声明を唱えているのです。
「てんかわべんざいてんに~おろがみまつる~」何度も何度も唱えながら、私を連れていってくれているのです。私は絶望感の中で、その声明の温もりを感じていました。
それは、すべてが終わった後のようです。何か大切なものを封印をして、そしてその封印を確実にするために、自分自身にも封印をした。封印をした瞬間、覇気はなくなり、すべての能力がなくなったのです。だから今まで私からは何の記憶も出てこなかったのです。
絶望感と後悔が入り交じった中、トボトボとトボトボと四人の山伏に導かれて、どこかに向かっている場面です。おそらくそこは金峯山寺です。紘美と初めて行ったときに、山伏の姿をした人達が般若心経を唱えられてる姿を見て、涙が溢れてきた感覚が重なります。
その映像が浮かんだ瞬間、嗚咽が止まりません。僧侶の尚子さんのセッションで出てきた山伏と一緒に封印をかけた場面とも一致します。間違いなさそうです。私の奥底から湧き上がってくるこの感情がそれを証明しています。止めどもなく涙が溢れます。
私の心の奥底にある蓋が、少し開いたような気がしました。
巫女からの訴え
天河弁財天の節分祭から帰ってきて、数週間後のことです。真夜中の一時くらいに電話がかかって来ました。昨年セッションをしたパニック症害に悩んでいた青木さんからです。魔女狩りと巫女狩りの前世を思い出し、症状も改善したはずです。その彼女から八ヶ月ぶりの電話です。こんな夜中に、胸騒ぎを感じながら通話ボタンを押しました。暗く寂しい声で「怖くて辛いんです。どうにかしてください。」と電話口で訴えてきます。嗚咽まじりの声です。軽いパニック状態です。ここ数日、夜中になると恐怖心が襲ってきて寝むれないと言います。仕事も休んでいるそうです。話をじっくり聞いてあげると、三十分ほどで落ち着いて電話を切りました。とても心配になります。
また次の日の夜です。昨日と同じ夜中の一時ぐらいに電話がかかってきました。「苦しいんです。怖いんです。」と電話口ですすり泣いています。「助けてくれると言ったじゃないですか…。」と訴えてくるのです。また話をじっくり聞いて、三十分ほどで電話を切りました。しかし、その日から約一ヶ月の間、毎晩のように電話がかかってくるようになりました。私が鬱になりそうです。
一体どうしてしまったのか。私のセッションのやり方が間違ったのか。とても悩み不安になりました。彼女の「助けてくれると言ったじゃないですか…。」という言葉が、私の頭の中で繰り返されます。何度も何度も繰り返されるのです。
「助ける…。」確かに、誰かに言ったような気がする。「助けに来るから。必ず助けに来るから待ってなさい。」と、確かに誰かに言った。誰に言ったのだろう。青木さんにも言ったかもしれない。しかし、青木さんだけではないような気がする。一体誰だろう。何日も考えました。その間も、彼女からの電話は毎晩のようにかかってきます。
「そうか!彼女一人の言葉だけではなくて、巫女狩りにあった巫女さんたちの言葉なんだ。巫女さんたちが、彼女の口を借りて訴えているんだ。」 間違いありません。
前世で巫女だった他のクライアントさんのセッションでも、「先生が助けに来ると言ったじゃないですか」と言った方がいたのです。
そうです。私が助けに来るのをずっと待っている巫女さんたちがいたのです。一日も早く助けに行かなくてはいけません。供養しなくてはいけないのです。しかし、その場所がどこなのかわかりません。姪の紘美に電話をしても、彼女もわからないようです。
「一体どこなのだろう…。」と、考えあぐねているうちに、一瞬映像がよぎりました。「如意輪寺・・・。」
初めて紘美と二人で如意輪寺に行った時の感覚よみがえってきました。「ここは沢山の巫女さんたちが殺されている」という感覚です。
実は、前述の紘美の姉の美貴のセッションでも、如意輪寺の場面が出てきていました。敵の武士達に拉致され、半地下の部屋に閉じ込められた人たちに、巫女の力を使って術をかけるように強要されていました。
敵方にしてみると、南朝の巫女さんたちが持っている特殊な能力が欲しくてたまらないのです。力のありそうな巫女を連れてきては、監禁されている者たちに、「おまえの術を使ってこの者達を殺してみよ!」命じていたのです。
しかし、誰もそれに従うものはありません。もしその力を持っていたとしても、仲間を殺すようなことは決してするはずがありません。
美貴もそこに連れてこられました。しかし、もともと彼女にはそのような力はありません。術をかけるフリをするのですが、もちろん何も起きません。そのあと、自分も含めて、監禁されている人たちが殺され始めます。しかし美貴は、命からがら逃げ出すことができたようです。
間違いありません。やはり如意輪寺です。あの時おみやげ物屋さんで見た、あるはずもない地下に続く階段は、その当時の半地下へ続く階段だったのです。如意輪寺で殺された巫女さんたちが、彼女の口を借りて訴えていたのです。「助けてくれると言ったじゃないですか…」 助けに行かなくてはいけません。
その内容を紘美に伝え、一週間後に如意輪寺に供養に行くことにしました。まず、天河弁財天の神様にお願いをして、次に金峯山寺の仏様にお願いをして、そして如意輪寺で供養しよう。そのあと、また巫女さんたちを天河弁財天にお戻ししよう。
如意輪寺での供養
当日、車で天河弁財天に向かいます。本殿に上がり本日のご守護と導きをお願いし、さらに金峯山寺の仏様に同じようにお願いをして、お茶を飲みながら休憩をしている時です。紘美が「この前の節分祭で民宿で一緒になった川村さんと偶然あったの。そしたらいきなり、紘美ちゃんは吉水神社に行ったほうがいいよ、と言われたんだけど、吉水神社ってどこにあるんだろう?」と言うのです。
「一体何だろうね」と言いながら、スマホで調べてみると、今いるところから百メートルほど離れたところでした。さらに調べると、そこは後醍醐天皇の皇居跡で、それがそのまま残っていると言うことです。
「これは行かなくてはいけない。後醍醐天皇にご挨拶に行こう。」という話になり、早速吉水神社に向かいました。実は私たちは、南北朝時代に後醍醐天皇にとても近い者だったのです。それは紘美や他の巫女さん達のセッションで明らかになっていました。
怖くなるほどの急勾配の下り坂と、上り坂を通り、吉水神社に入ります。そこには、こぢんまりとした社殿と、とても天皇の皇居とは思えないほどのお屋敷があります。
まず社殿の前に進み、二人で柏手を打ってお参りを済ませた後、皇居跡の拝観のために、受け付けに行きました。そこには、宮司さんが受け付けをしていました。
その宮司さんと目が合った瞬間、宮司さんが私の目をまっすぐに見て「お二人は!!」と、ビックリしたように叫ばれるのです。その瞬間、私たちも何かのスイッチが入ったようになり、私と宮司さんと紘美と三人で、テレパシーで会話をし始めたのです。そのような体験は初めてでした。
「お二人は!!」のあとに、「良く戻ってきましたね」という言葉が続くと言うことがわかり、「まだそれは言わないでください。他にも参拝客がいますから、それ以上は言わないでください」と、テレパシーで伝えているのです。
そうすると宮司さんは、一瞬の戸惑いの後、「お二人は!!入場料タダ!!」というのです。私たちもビックリです。「えっ?」という表情をしたと思うのですが、宮司さんは私たちの目をじっと見ながら「何十年もここで宮司をやっていますが、あなた方のように見事な参拝をされた方を見たのは初めてです。だからタダ」と、言い訳のような理由をつけて、私たちを通してくれたのです。
その時の宮司さんの目は、明らかに違っていました。もしかしたら後醍醐天皇が乗り移っていたのかもしれません。
その後、如意輪寺に向かいます。
境内の中は、前回来た時とはまるで違って、何かすがすがしい感じさえします。歓迎されているようです。まず本堂の前で、般若心経と大祓祝詞を奏上します。そして本題の、巫女狩りがあった半地下の跡です。そこには今は、後醍醐天皇の御霊廟が立っています。おそらく、巫女さんたちの供養のためでもあるのでしょう。しかしそういう記録は私が調べた限り見つかりません。
その御霊廟の前に立ち、般若心経と大祓祝詞を奏上します。奏上し終わった時、紘美が小さな声で「あ!」と言うのです。「どうした?」と聞くと、「今、床下から巫女さんがこっちを見ていたの。目が合った瞬間、さっと隠れた。」
「え?巫女さんが?・・・ずっと待ってたんだろうね。かわいそうなことをしたね。」と言うと、紘美は「そうだね。」と涙を浮かべます。
私は改めて「助けに来たよ。遅くなって本当にごめんね。今から帰るよ。みんなついておいで。助けに来たよ。」と何度も声をかけました。
如意輪寺での供養が終わった後、天河弁財天に戻りました。車を駐車場に止め、車を降りた瞬間、「ふるさと」のチャイムが鳴り始めました。ちょうど五時です。「お帰りなさいと言ってるみたいだね」と言いながら、本殿に向かいました。
本殿に参拝し、巫女さんたちの魂をお返しし、帰路に着きました。とても穏やかな気持ちです。
その日から青木さんからの電話はぴたりと止んだのです。正直、ホッとしました。巫女さんたちの供養がうまくいったのでしょう。
しかし、それから二週間後のことです。彼女から電話がかかってきました。恐る恐る通話ボタンを押すと「先生お久しぶりです。」と、元気な声が聞こえてきます。逆に拍子抜けするような感じです。
私 「どうしたの?何だか元気そうだね。」と恐る恐る聞き返します。
青木「そうなんですよ。何だか元気になったんです。」
私 「何かあったの?元気に越したことはないけど。」
青木「実は、二週間ほど前に、何かのスイッチがパチンと入る感覚があって、そこから元気なんです。」
私 「スイッチが入ったんだ。」
青木「ほんとに不思議だったんです。音が聞こえるぐらいにパチンとスイッチが入ったんです。そこから、憑き物が取れたように気持ちが変わったんです。しかし、もともと私は波があるから、しばらく様子を見ようと思って、二週間連絡を取るのを遠慮してたんです。しかし、二週間経っても元気だから、これは本物かもしれないと思って、電話をしてみたんです。」
どうも、本当に元気になっているようです。声の張りが全く違います。二週間前といえば如意輪寺の供養の日と一致します。
私 「二週間前からなんだ?」
青木「多分そうです。」
私 「そのスイッチが入ったのは、何時くらいだったか覚えている?」
青木「時間ははっきりわかりませんが、夕方でした。」
やはり間違いなさそうです。「ふるさと」のチャイムが鳴った時と同じ時間のようです。他の巫女さんたちも、安心して穏やかにいることでしょう。
金剛寺
半年後のこと、霊能者の森さん、姪の紘美と美貴、紘美の親友であり前世で乳母であった恵美、南朝の巫女であった真由さんと私の六人で、金剛寺に行くことになりました。紘美の姉の美貴がセッションで、黒曜石を入れた竹かごを見つけた場所です。何かヒントがあるかもしれません。
金剛寺(こんごうじ)は大阪府河内長野市にある真言宗御室派の大本山です。山号は天野山(あまのさん)。高野山が女人禁制だったのに対して女性も参詣ができたため、「女人高野」とも呼ばれました。
鎌倉時代末期には百近い塔頭があり、南朝の後醍醐天皇と近しい関係を築き、南北朝時代には観心寺と共に南朝方の一大拠点でした。延元元年/建武三年(一三三六年)一〇月一日には後醍醐天皇によって勅願寺とされました。
正平九年/文和三年(一三五四年)三月には大和国賀名生から北朝の光厳上皇・光明上皇・崇光上皇・廃太子直仁親王を当寺に移動させると観蔵院をその北朝行在所(あんざいしょ)とし、十月には南朝の後村上天皇自身も到来し、摩尼院(まにいん)を南朝行在所として食堂(じきどう)を政庁天野殿(あまのでん)とするなどして南朝の本拠地としました。つまり、南朝と北朝の天皇が、塀一枚を隔てたところに暮らしていたのです。
正平十年/文和四年(一三五五年)には光明上皇を京都に返し、正平十二年/延文二年(一三五七年)二月には光厳上皇・崇光上皇・直仁親王も京都に返された。そして正平十四年/延文四年(一三五九年)十二月には後村上天皇も観心寺に移りました。
しかし、正平十五年/延文五年(一三六〇年)には北朝の畠山氏の攻撃を受けて四十余りの塔頭が焼失し、さらに、文中二年/応安六年(一三七三年)には、和平に反対する長慶天皇が行在所としていた当寺に、和平派ゆえに北朝に寝返った楠木正儀があえて攻撃を加え、天皇を当寺から除かせて、しばらくの間占領する事件も起きたのです。(ウィキペディア参照)
岡本さんが思い出した場面、燃えさかる建物の中から黒曜石を持ち出した場面は、この二つの戦の内の一つようです。おそらく、正平十五年/延文五年(一三六〇年)の北朝の畠山氏の攻撃のような気がします。
さらに、南朝と北朝の天皇が、塀を一枚隔てた隣同士に暮らしていたことに、びっくりすると同時に、納得がいきました。
巫女や山伏たちが思い出した前世の内容に、少し疑問があったのです。南朝と北朝のやりとりが、余りにもスピーディーな場面がいくつか出てきていたのです。京都の北朝と、奈良吉野の南朝がやりとりするには、少なくとも数日、或いは数週間かかってもおかしくないはずですが、リアルタイムにやりとりができている場面がいくつか出てきていたのです。それが、小さな疑問としてずっと残っていました。しかし、この金剛寺に土塀を一枚隔てて暮らしていたのならば、説明できます。
その日は、真夏のとても暑い日でした。紘美の親友であり、初対面の私に「おじさんに謝らなくてはいけない」と大号泣した前世の乳母であった恵美が、金剛寺に近づくに従って、口数が少なくなりました。普段は一人でずっとしゃべっているようなとても明るい子です。それが、金剛寺に近づくにつれて、何か思いつめたような表情に変わっていきました。初めて会ったときに「謝らなくてはいけない。謝らなくてはいけない。」と泣きじゃくっていた感覚が、よみがえっているのかもしれません。
駐車場に車を停め、金剛寺の境内に入っていきました。残念ながら、本堂は修復中で中を見ることができません。テントに囲われた本堂を右手に見ながら、階段の上にあるいくつかのお堂に向かいました。
そうすると恵美が、いきなり号泣し始めたのです。何を聞いてもただ泣きじゃくるだけです。しばらくすると、霊能力者の森さんが霊視を始めました。そして、「ここで怖い思いをしたみたいね。助けを待ってたんでしょう。」というと、恵美はさらに泣きじゃくりながら「うん。うん。」と何度もうなずくのです。前世の記憶と感覚がよみがえったようです。さらに森さんが「この人が助けに来るのを待ってたんだよね」と、私を指差します。そうすると恵美は「うん」というと、さらに石段に突っ伏して泣き始めました。
私の助けを待っていた…。先日の如意輪寺と青木さんの一件を思い出します。「助けてくれると言ったじゃないですか」の言葉です。私はここでも助けることが出来なかったのか。なんともいえない感覚がわき上がってきます。
私自身はその時の状況を思い出せないまま、「恵美ごめんね。助けを待ってたんだね。今助けに来たよ。」と声をかけると、彼女はさらに泣きじゃくります。
彼女の背中をさすりながら「ごめんね。もう大丈夫だからね。本当に怖かったね。もう大丈夫。」と何度も声をかけると、少しずつ落ち着いてきました。
やっと落ち着いた恵美に「何があったみたい?」と聞くと、恵美は「ここに住んでいた気がする。紘美も一緒に。」と言うと、また泣き出しそうな声で「敵に襲われた。ほとんどの建物は燃え尽くされて、沢山の巫女さんや尼さんや神官達も殺されたような気がする。私は命からがら逃げ出して、天河弁財天に向かった気がする。」というのです。
さらに「初めて会ったときに言っていた、天河弁財天の裏の石碑の近くで、紘美を待っていたのが、その場面なのかな?」と聞くと、恵美は「多分そうだと思う。だから着物が焦げていたんだと思う。敵が攻めてきて、みんなこの周辺の山に逃げ込んで、そこで殺された気がする。」と言うのです。当時の現場に来て過去の記憶と感情が一気に蘇ったのでしょう。
しばらくして恵美も落ち着き、金剛寺の境内を出て、隣にある摩尼院に向かいました。そうすると、細い川を隔てた右側に籠堂という看板が見えました。美貴が「ここ。ここのような気がする。」と突然に言い始めました。「何?」と聞くと「竹籠。黒曜石を入れていた籠」「ここにあったということ?」
「そう。多分ここだと思う。建物の配置も昔のままのような気がする。」と言うのです。
六五〇年も昔ですから、建物がそのまま残っているとは思えませんが、同じ配置で立て替えてあるのかもしれません。美貴は間違いないといいます。
「びっくりする。間違いなくここにあった!」と何度も繰り返すのです。ここにあったことは間違いないようです。北朝はそれを奪うために襲って来たものと思われます。しかし、山伏だった岡本さんが命からがら持ち出したことも間違いないようです。紘美の記憶にも、同じような場面がでてきていたのです。
南朝行在所・摩尼院 (まにいん)
一年ほど前のセッションです。紘美が言うには「駕籠に乗せられて燃えさかる建物の中から脱出してる。籠の編み目の隙間から外を見ようとするのだけれど、見ないように目隠しをされる感じ。しかし、よく考えるとそこには肉体はないような気がする。魂だけでいる感じがする。もしかしたら、魂を封印した黒曜石が入った籠を誰かが運び出しているのかもしれない。私の魂というか意識だけが籠の中にいる感じがするの。」と言う場面を思い出していました。それが金剛寺なのかどうかは定かではありませんが、いずれにしろ残念ながらもうここには黒曜石は無いでしょう。できれば探し出したいのですが、六五〇年も前のことですから、どこかに残っている可能性も低いと思わざるを得ません。
その後さらに、道を左に折れ緩やかな坂を上り摩尼院に向かいます。南朝の天皇がいた南朝行在所(なんちょうあんざいしょ)です。私以外のみんなは、見覚えがあるというのですが、私にはよくわかりません。相変わらず私の記憶はよみがえって来ません。
建物の入口に「案内をご希望の方は、お声掛けください」と書いてありましたので、奥に向かって「こんにちは!すみません!」と何度か声をかけると、奥から上品なお婆様が出てこられました。
「すみません。中を拝見させてよろしいですか?」と聞くと、「どうぞどうぞ。よろしいですよ。正面を開けますので、少しお待ちください。」というと、一旦奥に戻られ、内側から正面玄関の扉を開けていただきました。
天皇がお住まいになっていたとは思えないほどの広さの建物です。それでも吉野の吉水神社の二倍くらいはありそうです。みんなは口々に「何か見覚えあるね」と小さい声でささやいているのですが、私にはよくわかりません。
小さい中庭に差し掛かったときです。恵美が「よくここで紘美が遊んでいたのをこの縁側から見ていた。」と懐かしそうに言い始めました。それを聞いた紘美は「そんな気がする。でもその時はまだ五~六歳だったような気がする。」恵美も「そう。そう。そんな感じ。鞠でよく遊んでいた。」と、六五〇年前のことを、ほんの数年前のことを話しているように、二人で懐かしそうに話をしています。
さらに、土蔵の中にある資料室に案内していただきました。巻物や刀、お茶の道具などが六畳ほどの広さの中に展示してあります。私は、黒曜石があるのではないかと期待していたのですが、それらしきものは見つかりません。案内をしていただいているお婆様に思い切って「ここには、代々伝わる黒曜石はありませんでしたか?」と聞くと、一瞬彼女の目が厳しくなりました。しかしすぐにその厳しさはなくなり、不思議そうな表情で「黒曜石ですか?私にはわかりません。」というお返事です。
しかし、あの表情の微妙な変化は、何か彼女の奥底に反応するものがあったのは間違いないでしょう。後で聞いたら、それに紘美も気づいていました。表層意識ではない、深層心理に反応するものがあったようです。でも、それ以上聞いても失礼ですから、お礼を言って隣にある北朝行在所に向かいました。恵美もさっき号泣したことはすっかり忘れたように、元気になりニコニコしています。一安心です。
北朝行在所の玄関まで来ると、今度は霊能者の森さんが突然「私行きたくない。なんか怖い。」と言い始めました。「どうしたの?」と聞くと「怖いから行きたくない。私ここで待ってるから、みんなで行ってきて。」と森さんらしくないことを言うのです。
「何が怖い?せっかくここまで来たから入ろうよ。」と言うのですが「私ここで死んだみたい。南朝行在所から拉致されて、ここに閉じ込められたみたい。だから行きたくない。」と言い張ります。「こんなにすぐ隣だったのに、誰も気づいてくれなかった。」と少し怒ったように言うのです。
「森さんもここで亡くなってたんだ。ならば、なおさら行こうよ。その恐怖心を解消したほうがいいでしょう」と説得すると「…。わかった。行く!」と覚悟を決めてくれました。
拝観料を払い、お屋敷の中に入ると、南朝行在所の五倍はあろうかという立派なお屋敷です。その当時の南朝と北朝の力の差を感じます。さっきまでおとなしくしていた紘美の姉の美貴は喜々としています。私が「どうした?嬉しそうだね?」と聞くと、美貴は「当時もこの屋敷に入ってみたかった。豪華で綺麗なお屋敷だと噂で聞いていたような気がする。北朝行在所に比べたら南朝行在所は、ちょっとみすぼらしかった。だから、一度ここに入ってみたいなと思っていた気がする。」とうれしそうに話しています。
一方、森さんは少しつらそうな表情をしています。「大丈夫?」と声をかけると、庭の一角を指さして「あそこに小さな建物が建っていて、そこに監禁されていたような気がする。」「そしてどうなったの?」「たぶん餓死した」と淡々と言うのです。
しばらく彼女は前世の自分と会話をしてるのか、じっと一点を見つめ何度かうなずくと、自分自身を供養するかのように、小さい声で般若心経と祝詞を唱え始めました。私も彼女の隣で手を合わせます。悲しみを含んだそのお唱えは、時とともに温もりに変わり、庭の雰囲気も心なしか清々しくなっていきました。お唱えが終わった彼女の表情は、いつもの笑顔になっていました。置き去りにした自身の魂の一部を、お迎えすることができたのでしょう。
「もう怖くない?」と聞くと「大丈夫。やっぱり来てよかった。」と、にっこり微笑んでいました。
守る
不思議な夢
この出来事が始まって三年目ぐらいの夜です。不思議な夢を見ました。
綺麗な林の中に、こざっぱりとした着物を着た男女十名くらいが輪になって話をしています。穏やかな様子です。それを私は十メートルぐらいの上空から見下ろしているのです。高い木の先端に浮かんでいるような感覚です。
次の瞬間、私もその人たちの輪の中に加わっていました。初対面にもかかわらず、親しげに話しをしているのですが、何を話しているのかはわかりません。
しばらく話をしていると、その中のリーダーのような男性が私に向かって「一宇さん、みんなを代表して祈りをささげてください。」と言うのです。私は「たった今来たばかりなのに…?」と思いながらも「わかりました」と引き受けました。
気づくと私の後ろに一メートルぐらいの高さの石の台があります。その台の上に両肘を乗せ、手のひらを上に向けて、祈りをささげようとした瞬間、ある映像がありありと浮かんで来たのです。
それは青い地球の姿です。しかし、少しくすんでいるようにも見えます。それを、宇宙空間から見ているのです。そうすると、地球の赤道上空に光の点が現れ、それが二つの光のラインとなって地球を囲むように左右にわかれ、ひかりの輪となって反対側で繋がった瞬間、地球を包んでいた光が眩しいほどに白く輝き始めたのです。その瞬間「あっ、私はこのために生まれてきた。やっと達成した。」という感覚が湧き上がり、大号泣をしはじめました。
ハッと目が覚め、起き上がると実際涙が溢れていました。あれほどはっきりした映像は初めてです。心臓もドキドキしたままです。十年前の節分の日の朝に「何かを封印した」という感覚が湧き上がったときの感覚と似たものがあります。漠然とはしているものの、確信があるのです。
「私はこのために来た」という感覚です。必ず達成できる。達成しなければいけないという、強い使命感が奥底にあるのを感じました。
高次元のエネルギーと巫女や神官の魂
なぜ、巫女や神官の魂を封印する必要があったのか。その魂にはどういう意味合いがあるのか。その意味が少しずつ分かってきました。確かに、特別な力を持った存在であることは間違いありません。色々な能力があったようです。いわゆる超能力です。病を治したり、場を清らかに保ったり、高次元からメッセージを受けたり、未来を予知したり、天候をコントロールしたりなど、特殊な能力を持っていたようです。では、その力を封じたかったのか。もちろんそれもありますが、それだけではないような気がします。
巫女や神官は、ノーベル賞学者やオリンピックメダリストのような、抜きん出た才能を持った人達というニュアンスとは少し違う気がするのです。才能のようなものではなく、魂の存在そのものに意味があるような気がします。
宇宙の意思そのものが凝縮したもの。高次元のエネルギーそのものが形となったもの。つまり、高次元のエネルギーの源泉そのもの。清らかな水が湧き出る水源そのもののような存在。あるいは、高次元と繋がるアンテナのような存在。
術やパワーを使うとか、そういうレベルではなく、そこに存在するだけで清らかな水があふれだし、周りが真水に満たされていくような存在。水の玉。
もしそれが汚されたら。水源の清らかな湧き水を汚されると、下流の川も海も全てが汚れていく。
もしそれが悪用されたら。世界中が黒い霧に覆い尽くされ、闇の中に沈んでしまう。虚無に覆われてしまう。全ての輝きが失われ、忘れ去られる。忘れ去られると、蘇ることもない。そうなる前に、灯火の種を守らなくてはいけない。灯の種。それが巫女や神官の魂なのかもしれません。
田村さんの証言
田村さんは男性の方です。彼は特別何か悩みがあるわけではなさそうです。悩みを抱えていた彼の友人が私のセッションを受けて、劇的に変わっていったのを見て、自分も体験してみたいという興味本位の動機でした。簡単なカウンセリングを済ませ、早速前世へと誘導しました。いつものように催眠状態に導き、質問をしていきます。
私 「何が見えてますか?」
田村「世の中の安寧・平和を願って修行しています。ある時村が襲われました。敵が襲ってきて村に火が放たれたのです。」
私 「あなたはどうしてますか?」
田村「村人を逃がすのに必死です。お堂に火が回って大切な書物がなくなるかもしれません。」
私 「その書物って何なの?」
田村「命を懸けて守らなくてはいけないものです。その書物を持って命がけで逃げています。」
私 「逃げることはできましたか?」
田村「大丈夫でした。私達には山伏のネットワークがありますが、その山伏に渡すと敵にばれてしまう恐れがあるので、好意を寄せていた一般の女性に渡しました。」
私 「その書物は無事でしたか?」
田村「渡したのはダミーです。そこには真髄は書かれていません。そのことは女性もわかっています。」
私 「ダミー?。その神髄って何?」
田村「わかりません。」
私 「わからないの?それとも、言ってはいけないの?」
田村「言ってはいけません。言えない。」
ここでも「言えない」と言う言葉が出てきます。
私 「わかった。ではダミーとわかってて守ったの?」
田村「そうです。ダミーを命がけで守ることで敵を欺くことができます。」
私 「そうか。そこまでして守らなくてはいけなかったんだ。その後どうしましたか?」
田村「その後、仲間たちと話し合いました。書物を秘密の場所に隠して、ある人にその記憶を消してもらった上で、わざと敵に捕まりました。」
私 「どうしてそんなことをしたの?」
田村「記憶がなければ、厳しい尋問を受けても、何も思い出せません。その方が敵を欺けると思い、それを選択しました。結局、みんな死んでしまいましたが、大切な秘密は守り通すことができました。」
私 「大変だったね。辛かったろう。でももう秘密にしなくてもいいよ。」
田村「時が来るまで口をつぐむと契約をしました。その時がいつなのかわかりません。今のような気もしますが、確信は持てません。」
彼も、自らの命をかけて何かを守り通していました。ダミーを作って、それをあたかも本物のようにして、命がけで守っていたようです。そこまでして守らなくていけない真髄とは一体何なのでしょう。六五〇年間もの間守らなくていけないものは何なのでしょうか。ますます謎が深まります。
そして、その時とはいつなのでしょう。
吉岡さんの証言
彼女はご主人との関係に悩んでいらっしゃいました。彼女が言うには「夫との間に壁を感じるし、もともと人が信用できない所もある。そこをどうにかしたい。」と言う動機でした。
しかし前世に誘導していくと意外なものが出てきたのです。
私 「何が見えてますか?」
吉岡「白い服を着てます。山伏?」
私 「山伏だった?」
吉岡「はい。私はおとりになっていた。言えない。言えない。裏切り者がいた。嘘の道を教えた。その人のことは言えない。言うとその人が殺されてしまう。」(涙)
私 「言えないことがあるの?」
吉岡「…。」
またここでも「言えない」という言葉が出てきます。
私 「そこには何人いるの?」
吉岡「私も含めて三人です。偉い人と一緒にいます。少し離れた所に、沢山の武士がいるようです。」
私 「その偉い人って味方なの?」
吉岡「敵です。敵の偉い人。裏切り者です。」
私 「その偉い人って裏切り者だったんだ。」
吉岡「はい。」
そう言うと、一瞬間をおいて、彼女が叫びはじめました。
「そっちに連れて行ってはいけない!。ダメッ!」
彼女は完全に六五〇年前の場面にタイムスリップしてるようです。あたかもその場所に居るように話し始めました。
私 「そっちって?」
吉岡「山の上。殺すの。誰かを殺しに行っている。」
私 「その敵の偉い人が誰かを殺しに行っている?」
吉原「はい。…。怖い。」(涙)
私 「大丈夫。もうそれは済んでいること。だから大丈夫。誰を殺しに行っているの?」
吉原「(号泣)」
私 「山の上の人が殺されないように、敵に嘘の道を教えているの?あなたは山の上にいる人を守りたいの?」
吉原「・・・」
私 「敵側に潜入して嘘を教えてる?スパイのような感じ?」
吉原「スパイ・・・。はい、そんな感じです。」
私 「敵の偉い人はどうしたの?あなたは違う道を教えたの?それとも間違った道に行った?」
吉原「裏切った。私が裏切った(涙)」
私 「あなたが裏切った?本当の道を教えたと言うこと?」
吉原「はい。敵から裏切り者と言われた。潜入していることがバレそうになった。だから本当の道を教えた。」
私 「その裏切り者から、あなたが裏切り者と言われたんだ。どうして?」
吉原「裏切り者とわかってしまうと、敵方に潜入できなくなってしまう。そうすると味方を守れなくなる。生きてさえいれば、どうにかなるかもしれない。少しでも時間が稼げるように本当の道を教えた。」
私 「そうなんだ。敵が山の上にいる人を殺しに行こうとしているんだ。それを阻止するために本当のことを言って、潜入を続けることを選んだんだの?」
吉原「はい。」(涙)
涙でしばらく言葉になりません。彼女は敵方に寝返ったふりをして、潜入していたようです。
吉原「守らなくてはいけない。守らなくてはいけない。守るために来た。」
私 「山の上の人を守るために来た?」
吉原「はい」
私 「そしてどうなった?山の上の人というのは男性?女性?」
吉原「男性です。」
私 「山の上にいる人は一人なの?それとも何人かいたの?」
吉原「七人です」
私 「裏切り者たちがその人たちを殺しに行くんだ。それを助けたかった?守れた?」
吉原「逃げてください!!逃げてください!!」
彼女はいきなりパニック状態で叫び始めました。
私 「大丈夫、大丈夫だからね。結局その人たちは逃げられたみたい?」
吉原「…。言えない。言えない。」
私 「もしかしたら、その人たちが生き延びたことを、秘密にしなくちゃいけないのかな?」
吉原「…。」
どうもそのようです。秘密にしなくてはいけない理由がありそうです。殺されたことにしたほうが都合がいいのでしょう。
私 「その後、あなたはどうした?」
吉原「山にいた人たちの後を追った。守らなくてはいけない。」
私 「その時は助かったんだ。そして彼らの後を追ったんだ。逃げることができたんだ。そしてその後どうした?」
吉原「わからない。はぐれたみたい。見失った。」
私 「ではその後あなたがたはどうしたの?」
吉原「私一人しかいない。」
私 「あとの二人はどうしたの?」
吉原「いない。いない。どうしたのかわからない。」
私 「いなくなったの?」
吉原「…。早く。早く。早く!」緊急事態が起きているようです。
私 「早く逃げなくてはいけない?」
吉原「侍がいっぱい来た!早く!」
私 「その七人の中の一人は、南朝の偉い人かな?」
吉原「…。」
私 「言ってはいけない?」
吉原「…。」
私 「そうか。その人たちは大切なものを持ってない?」
吉原「二番目の人が持っている。」
私 「それをねらわれているの?」
吉原「ご無事で…。ご無事で…。」祈るようにつぶやきます。
私 「その人たちを守るために、殺されても言わなかったんだ?」
吉原「はい。聞かれたけど言わなかった。」
私 「その人たちを守りたかったの?」
吉原「はい。」
私 「その人は今の誰かわかるかな?」
吉原「一宇さんです。」
私 「そうか。私を守ってくれたんだ。」
吉原「はい(号泣)」
私 「ありがとう。本当にありがとう。」
吉原「よかった。よかった。」
私 「本当にありがとう。」
吉原「まだ周りにいる。気をつけてください。」
私 「そうか。でももう大丈夫だよ。俺がそのとき何を持っていたのか知っている?」
吉原「まだ周りに裏切り者がいるから言ってはいけない。」
私 「そうか。今言えないのならばいいよ。しかしね、あなたが今苦しむ必要はないよ。その時の恐怖心を引きずる必要もないよ。何かを秘密にする必要もないし、人の目を気にすることもない。」
吉原「…。ありがとうございます。」
私 「本当にありがとう。」
吉原「もういいんですよね?」
私 「もういいんだよ。もう大丈夫。もう怖いことは起きない。」
吉原「はい。よかった(涙)。」
やっと安心したようです。そしてゆっくりした言葉で「白い玉を持っている・・・。」とつぶやくように言います。
私 「白い玉?私が持っていた大切な物というものはそれなの?」
吉岡「それを手放してはいけない」
私 「それはどうしたみたい?」
吉岡「あなたが持っている。あなたが身につけている。」
私 「私が持っている?エネルギーとして持っているということ?それとも現物をどこかに隠してるということ?」
吉岡「わからない。あなたが持っている。」
私 「裏切り者たちはそれをねらっていたの?」
吉岡「黒い箱と、あなたの命と。」
私 「その黒い箱には何が入っているの?」
吉岡「白い玉が入っていると見せかけて。…。本物はどこ?本物は?」
私 「偽物を入れていたんだ。それはあなたも知らないの?」
吉岡「本物は…。大丈夫。大丈夫。」
私 「言ってはいけないの?」
彼女はまた口をつぐんでしまいました。
私 「その白い球は私が持っていたみたい?」
吉岡「色んな場所に埋めている」
私 「いくつもあるの?」
吉岡「偽物を埋めている」
ここでも敵を惑わすために、偽物を沢山作って本物のように守ったようです。
私 「偽物なの?本物は一つ?」
吉岡「言ってはいけない」
私 「言ってはいけないんだ。命令された?」
吉岡「言ってはいけない」
私 「命令されたことも言ってはいけないんだ。わかった。ところで、裏切り者は何人もいたの?」
吉岡「はい。」
私 「誰が裏切り者かあなたは知っていたの?」
吉岡「はい」
私 「あなたは裏切り者たちの中に紛れ込んでいた?」
吉岡「はい」
私 「だからあなたは、裏切り者から裏切り者と言われたんだ。」
吉岡「そうです」
私 「守るために紛れ込んでいたんだ」
吉岡「はい。世を変えてください。世を変えてください。…。ここまでです。私が知っているのは。」
私 「ありがとう。本当にありがとう。」
吉岡「何千何万の民のために、世を変えてください。できるのはここまでです。私にできるのはここまで。」
私 「もういいよ。もういい。よく頑張ってくれた。」
吉岡「またどこかで、またどこかでお会いできますように。お礼の言葉などもったいないです。天に感謝をいたします。…長かった。長かったです。」
私 「長かったね」
吉岡「やっと許してもらえた」
私 「沢山の人が死んでいったの?その責任を感じていたんだ」
吉岡「私の力不足です。私にはここまででした。守りたかった。疲れました。巫女さん達にはかわいそうなことをしました。助けられませんでした。」
彼女は、沢山の巫女さんたちが殺されていったことに、責任を感じていたようです。
私 「巫女さんたちの魂も、すでに救われているよ。もう苦しんでいない。だからあなたがいつまでも責任を感じる必要はないよ。みんなあなたに感謝している。もちろん私も。ずっと自分を責めてたみたいだね」
吉岡「守れなかった。最後まで。もっと助けてあげたかったけど守れなかった。もっと私に力があれば。こんな私も許してもらえますか?」
私 「もちろんだよ。もちろん。あなたはよく頑張ってくれた。みんなあなたに感謝している。本当にありがとう。」
吉岡「よかった。よかった。ありがとうございます(涙)。巫女さんたちの笑顔が見えます。みんな笑顔です。本当によかった。」
さらに「山の上が光っている。鳥居のあるところが光っている。なぜだろう。」と言いながら目を開きました。
催眠状態から目が覚めた彼女は、とても疲れきった様子ですが、過去の自責の念から解放され、安堵の表情も浮かべています。
私 「大変だったね。二重スパイのようなことをしていたんだ。」
吉岡「そうみたいです。だから、人の目が気になったり、人が信用できなかったりしてたんでしょうか。」
私 「恐らくそういうことだろうね。何百年も大変だったよね。」
吉岡「でもなんだかとてもスッキリしています。罪悪感と自責の念を抱えてたんですね。抱えていたものを手放してみると、それがどんなに重たかったのかよくわかります。」
私 「本当に大変だったね。本当にありがとう。ところで、ダミーを色んなところに隠していたみたいだね。」
吉岡「そうみたいです。本物のようにして守れと言われてました。しかし、それが一体何なのかはほとんどの人が知らなかったと思います。私も、知っていたような感覚はあるのですが、記憶を消されたのか、自ら消したのか。そんな感覚もあります。」
私 「私が持っていた白い球は、どこにあるんだろ?現物ではなくてエネルギーとして持っているのかな?」
吉岡「よくわかりませんが、そんな感じがします。時が来れば、そのエネルギーは表に出てきて、世のために動き始めるような気がします。」
本物がどこにあるのか、それが一体何なのか。いまだにわかりません。白い球とは何でしょう。
ところで、大切なものを隠す確実な方法をご存知でしょうか。それは、隠した場所を忘れるということです。忘れてしまえば、確実に隠し通すことができます。どんな尋問を受けても、忘れていれば白状することもありません。当時の巫女さんや神官たち、山伏たちは記憶に封印をかけて忘れるという選択をしたようです。もちろん私も、自らに封印をかけて、忘れてしまっているようです。
しかし、それが世の中に罪悪をもたらすような邪悪なものであれば、その封印は「永遠に」としているはずですが、私達が封印したものは、その邪悪な者たちから純粋なものを守るための封印です。ということは、「永遠に」とはしてないはずです。永遠に封印をしてしまえば守った意味がありません。間違いなく「時が来るまで」としているはずなのです。
今、このように沢山のご縁のある方々が集まり、様々な事が明らかになっているということは、その時が近づいているのかもしれません。
彼女の悩みであった「人が信じられない」の原因がわかりました。彼女自身が二重スパイをしていたのです。人を疑って当然です。その後、猜疑心や不安感が解消し、夫婦関係も改善に向かいました。
巫女達の苦しみ
池内さんの証言
彼女は高校生の息子さんの不登校に悩み相談にいらっしゃいました。学校の成績もよく、友人も沢山いて楽しそうにしていた子がいきなり不登校になったそうです。学校で問題があった訳でもなく、どう対処して良いのか悩んでいらっしゃいました。
息子さんの問題を解決するのに、お母さんの前世がなぜ関係するのか不思議に思われるでしょう。息子さんが今抱えてる悩みの原因が前世にある場合、母親がその前世に深く関わっている場合が多いのです。と言うより、前世で深く関わっていたから、現世で親子になっている可能性が高いといった方が良いかもしれません。
現世で一番縁の深い母親の前世を探ることで、問題の根本原因を明らかにすることができます。そして、母親を通じて息子さんの魂の癒しも可能になってきます。
一時間ほどのカウンセリングの後、彼女を前世に誘導しました。
私 「何が見えてますか?」
池内「娘が殺されました(号泣)。」いきなりショッキングな場面から始まりました。
私 「何があったの?」
池内「娘を利用したいと思っていた人がいた。それを娘は拒んだみたいです。」
私 「なぜ娘さんを利用しようとしたの?」
池内「私達には特別な力がありました。人の心を読んだり、人を動かしたりする力があります。」
私 「特別な力があるんだ。そういうグループなの?」
池内「巫女です。今の息子は前世での娘です。私は巫女の教育係です。その中に当時の娘であった今の息子もいます。」
私 「みんなそんな力を持っていたんだ。」
池内「そうです。才能のあるものたちを集めて修行していました。」
私 「どんなことをしていたの?」
池内「息子には特別に力があって、役目のために京都に行きました。自分の力を使って人の思いを現実化してあげている。この世界を良い所にしようという志がある。邪悪な者はよせつけない強さがあった。しかし、いろいろなものを吸い寄せてしまう。」
私 「色々なものって?」
池内「人々の想念や人そのもの。」
私 「その後どうなったの?」
池内「(涙)。…。みんな殺されました。私達を利用しようとする者たちを拒否したのです。(号泣)」
ここでも巫女狩りが起きていました。彼女は嗚咽の中で絞り出すように、一気にしゃべり始めました。
池内「自分の力が災いを巻き起こした。人の心を読む力・・・。しかし、この力は使わなくてはいけない。でも怖い。怖い(涙)。また大変なことが起きるかもしれない。息子の力を人に見せてはいけない。見せるとまた大変なことになってしまう。人を動かす力、世の中を変える力。しかし、息子にはコントロールできない。足りないものがある。自分で制御できない。制御できるようになるためには、周りを見る目が必要。いつもどこかに何かを探している。自分の力を使ってもいい場所。自分の持っているものを引き出してくれる場所。人を探している。力を悪用されないように、安心して使える場所を探して苦しんでいる。」
彼女の深い所からの想いや記憶が出てきました。彼女の言葉はさらに続きます。
「今の夫も息子が力を開くことを怖がっている。そういう出会いも怖がっている。私も巫女。私も伝える役目だが息子ほどの力は持っていない。私にはその力が何のために必要なのかわからない。力を持たない者が幸せな人生を歩んでいる。楽な人生を歩んでいる。なぜ私達が苦しまなくてはいけないのか。(涙)
しかし、多くの魂を救うこと。それを全うできるように助けていかなければならない。邪悪な者たちに利用されないように、私自身の力も使わなくてはいけない。
人の心を読む力。この力を開いたら、とてつもない事が起きそうで怖い。この力のせいで多くの人が殺されてきた。悪用しようとする人たちが、どこにでも、いつの時代にも沢山いた。苦しんできた。もうこんな力は要らないと思ってきた。ただ苦しいだけだと思ってきた。
しかし、人の役に立てたいともずっと願ってきた。心を読む力は色々な力につながっていく。それぞれの場所で封印が解ければ、力同士がつながって強大なものになる。
地球のエネルギーは上昇しているが、ついてこれない人々がいる。助けてあげたい。そのエネルギーをまとめる人が必要。そのためには解放された人達が必要。その人たちの手助けをする人達も必要。開く手助けをしなくてはいけない。その覚悟が必要。
私の中の力を更に強くする必要がある。人々のエネルギーの繋がりが必要。どうすればいいのかじっくりと考える必要がある。」
だんだん話し方が変わってきました。その声の主は池内さん自身を離れ、高次元の存在がしゃべり始めたようです。威厳に満ちた雰囲気です。それは私個人へのメッセージとなってきました。
「あなたの力を高めるために、これから多くの出来事が起きてくる。それを乗り越えることで力がよみがえる。過去に多くの者の犠牲があった。挫折してはいけない。自分の役割を思い出し役割を果たすことが地球を救うことになる。もちろんあなただけではなく、様々な力が地球を救うために動いている。
封印が解かれた力はどれほど大きくなるかは、それをどのように使っていくかにかかっている。使わなければ、その力に反発する者達からまた封じ込められる。その力がきちんと成していけるかは、今生きている者達にかかっている。それぞれが力の使い手としての自覚をして、守っていかなければならない。」
完全にしゃべり方が変わってきました。声のトーンも違います。先ほどの怯えた声とは打って変わって、男性的な落ち着いた声です。
地球を救う?いくらなんでも…という感じですが、以前見た夢で地球が眩い光に包まれていく光景と、何か関係があるのかもしれません。
さらに「池内さん自身に対してメッセージをいただけますか?」と聞くと、「池内の魂はまだ力を使うことを怖がっている。しかたないところはあるが、覚悟しなくてはいけない。恐怖を手放す必要がある。だが、この人生においても悪用しようとする力、邪悪なエネルギーが有ることも事実。邪悪なエネルギーは眠っている訳ではない。悪用されないようにコントロールする必要がある。そのエネルギーに打ち勝つだけの強大なエネルギーも必要。
自分の封印を解きたくない者達がいるのはそのためだ。恐怖の記憶がこびり付いている。現在もまた酷い目に遭うんじゃないか、大切な人達が苦しむんじゃないか。その恐れがあると言うことを知ってる。間違いなく邪悪なものに打ち勝つ力があるという安心がなければ、封印を解こうとしないだろう。」
確かにそうなのかもしれない。だから「言わない」と言う言葉が出てくるのでしょう。みんなとても慎重になっているようです。それは私もそうです。ですから、この本を書くこともとても躊躇しました。
真実を知っている魂は、その重要性や悲惨な出来事のことを魂の奥底で知っていますから、出来れば関わりたくないと思ったとしても仕方ありません。自分の持つ能力を隠したくもなるでしょう。少なくとも力をひけらかすことはしません。
更に池内さんの口を借りて、存在の言葉が続きます。
「正しいエネルギーは出てきているが、まだ邪悪なエネルギーを押しやるまでにはなっていない。力を結集せねばならない。邪悪なエネルギーを閉じ込める力を結集せねばならない。あと一息だ。油断してはならない。邪悪な者達に利用されないように力を固めていかなければならない。分散してる力を点から面へ。面から完全な球体へ。それで調和が保てる。あと少し。」
言葉が止まりました。暫くして、彼女は少しずつ目を開き始めました。少し茫然とした様子です。「大丈夫?」と聞くと「一体何をしゃべってたんでしょう。全部覚えているのですが、私にはよく理解できません。」と、少し戸惑った様子ですが、穏やかな表情でもあります。彼女の中の何かが開いたような感じです。
私 「息子さんの不登校の原因がわかったみたいですね。おそらく、前世で自分が原因で沢山の人が殺されたから、自分は目立ってはいけない、存在を知られてはいけないと思い込んでいたのでしょう。だから外には出てはいけないのでしょうね。」
池内「そういうことなんですね。納得できます。」
私 「それにしてもすごいメッセージだったね。すごい能力を持っていたんだ。それがバレることに恐怖心があっても仕方ないよね。」
池内「そうですよね。しかし、そんな感覚は昔からあったんです。そこに蓋をしてるような感覚もずっとありました。」
私 「もうそれも開いていいでしょう。慎重になる必要はあるけどね。」
池内「そうですね。」
池内さん親子も、その能力を悪用されそうになって、それを拒否したことによって大変な目に遭っていました。そのことによって、自らの能力を封印したようです。そのような人たちは沢山いるようです。その恐怖心を今の人生にも引きずり、世の中や自分自身に対して自由に生きれなくなってしまっていたのです。
彼女の力「人の心を読む力」。それは両刃の剣です。人の心を癒すこともできれば、コントロールすることもできます。一部の宗教がそうであるように、悪用したい者たちにとっては、とても魅力的なものでしょう。民衆を、世界を自由にコントロールできることにもつながるのです。それは、絶対に阻止しなければいけません。彼女たちはそれを命をかけて守ったようです。
川村さんの証言
彼女は四二歳の女性です。彼女の悩みは少し変わっていました。「今まで、誰にも言ったことがないのですが・・・」と、私の様子をうかがうように、悩みを言うのをためらわれています。
「大丈夫ですよ。秘密は厳守しますし、躊躇される方も多いですよ」と言うと、少し安心されたように喋り始めました。「実は・・・。信じてもらえないかもしれませんが、私の胸の奥に十五センチくらいの蓋のついた木の箱があるんです。・・・。言ってることが変でしょ?
確かに言っていることが掴めません。
私 「箱?ですか?」
川村「そうなんです。蓋のついた木の箱がある感覚があるんです。単なる空想かもしれないんですが、とてもリアルなんです。」
私 「はい。胸の中の箱が気になるんですね?」
川村「そうなんです。その蓋の隙間からは血が滴り落ちているんです。」
私 「血が?」
川村「はい。朝出かけるときに、箱を包帯で巻いて、血を止めなければ家から出れないんです。仕事にも行けないんです。うまく血が止まればいいんですが、時々何度巻き直しても止まらない時があるんです。そういう時は、家でじっとしておくしかないんです。」と怯えたように言うのです。
さらに「その箱はいつからそこにあるの?」と聞くと、「物心ついた時からある感じです。でも子供の頃は、その箱に気づいたり気づかなかったりしていました。あまり気に止めていませんでしたが、二十歳を過ぎたあたりから、その箱に支配されているような、そんな感覚なんです。罪悪感のような、恐怖心のようなものに支配されているんです。」というご相談です。今までも沢山の悩みを聞いてきましたが、このような内容は初めてです
。
「罪悪感を感じるような前世があったんだろうね。その箱が罪悪感を象徴しているような気がします。その原因を明らかにすることで、改善すると思いますよ。」とお話をすると、彼女は少し安心されたようですが、前世と向き合うことに対して、不安感もあるようです。
さらにいくつかのカウンセリングをした後、前世へと誘導しました。
私 「あなたが箱を抱えることになってしまった、原因となっている前世へといきましょう。何が見えてますか?」
川村「暗い森の中にいます。」
私 「そこで何をしているの?」
川村「一人で茫然としています。」
私 「何があったの?」
川村「大変なことをしてしまいました(涙)」
私 「大変なことをしてしまったんだ。ではその場面へと戻ろう。何が見えてますか?」
川村「怖い。怖い。」
私 「何が怖いの?」
川村「沢山の巫女さんたちが殺された(号泣)」
ここでもまた巫女狩りの場面が出てきました。巫女さん達が殺されているようです。
私 「一体何があったの?あなたは大丈夫なの?」
川村「ごめんなさい。ごめんなさい。(号泣)」
私 「どうしたの?謝らなくちゃいけないことをしたの?」
川村(号泣)嗚咽で暫く言葉になりません。
私 「もう大丈夫だよ。いつまでも自分を責めなくてもいい。大丈夫だから言ってごらん。」
川村「私のせいなんです。ごめんなさい。ごめんなさい。(涙)」
私 「何があったの?」
川村「私も頑張ったんです。一生懸命頑張ったのに…。頑張ったのに分かってもらえなかったから…。」
私 「あなたも巫女さんだったの?」
川村「はい。」
私 「巫女さんを頑張ったんだ。それをわかってもらえなくてどうなったの?」
川村「頑張ったのに、頑張ったのに。悔しくて。(号泣)」
私 「悔しかったんだ。そうか。それでどうしたの?」
川村「皆が集まる御神事の日を、侍に教えました。」
私 「侍にだまされたの?」
川村「いいえ。その侍は敵の人だということは知っていました。教えたらどうなるかも分かってました。」
私 「攻めてくるということは知っていたの?」
川村「はい(涙)。知っていました。大変なことになるということも分かってました。でも、悔しくて教えてしまったんです。」
私 「何があったの?」
川村「その日の御神事の一番大切な舞と、玉串の奉納を私がするはずだったんです。それが、いきなり他の巫女に変えられたんです。家柄が違うんです。そんなことが何度もあったんです。でも我慢して、みんなの何倍も頑張ったんです。」(号泣)
私 「そうか。本当に悔しかったんだ。それで、御神事の日はどうなったの?」
川村「敵が来ることは知っていたので、私は裏山に隠れていました。そうすると、敵が攻めてきて・・・。巫女たちの悲鳴が聞こえ始めました。(号泣)」
私 「悲鳴が聞こえてどんな気持ちだった?」
川村「怖くて、怖くて。大変なことをしてしまった(号泣)。ごめんなさい。ごめんなさい。」
私 「その後あなたはどうしたの?」
川村「その場から動けなくなりました。」
私 「動けなくなって、そこで死んじゃったの?」
川村「そうです(涙)。何日もかかって餓死しました。こんな自分は苦しんで死んで当然なんです。何度生まれ変わっても幸せになってはいけないんです。みんなの苦しみを、私は抱えていかなくてはいけないんです(涙)」
私 「そうなんだ。みんなの苦しみが胸の箱の中に入っているのかな?」
川村「そうです(涙)。私はこれを抱えて生きていかなくてはいけないんです。何度生まれ変わろうが、みんなの供養をしなくてはいけないんです(号泣)」
彼女の胸の中の箱の意味がわかりました。自分のせいで沢山の巫女さんたちが死んでいったことを後悔し、自分を責め続け、罰し続けていたのです。蓋の隙間から滴り落ちる血を、包帯で止める作業が彼女にとっての供養だったのかもしれません。彼女の前世の魂を許し癒すことによって、彼女の罪悪感は消えていきました。
セッションが終わって彼女は、全身の力が抜けてしまったような、ほっとしたような表情をされています。
「本当に辛かったね。ずっと苦しかったでしょう。」というと、まだ少し呆然とした感じで、「はい。あんな前世があったんですね。信じられない気もしますが、あの感情や感覚は認めざるを得ません。」と、まだ呆然とした感じです。「そうだよね。単なる空想ならあんなに号泣することもないでしょう」と言うと、「そうですよね。」と少し安心されたようです。
さらに「胸にあった箱は、今はどうなっていますか?」と聞くと、彼女はしばらく胸の中を探るようにして「あ…。ありません。見当たりません。箱があったところは、箱の形で空間になってます。不思議な感じです。」と、戸惑った感じです。「今まであったものがなくなると、何か変な感じがします。」と、泣き笑いのような表情です。
その一週間後、彼女から報告メールが届きました。箱はすっかりなくなり、罪悪感や恐怖心もほとんどなくなって、安心した日々を送っているそうです。もちろん、包帯を巻く必要もないようです。
彼女も敵方に情報を漏らしていました。悔しさと寂しさの中で、つい裏切り行為をしてしまったのです。しかし、その出来事が余りにも悲惨で残酷な結末だったために、自分を責め罰する人生を選択し始めたのでした。そんな人生を何度も繰り返してきたようです。
このときの神社がどこなのかわかりませんが、おそらくこういうことが様々なところで起きていたようです。現に他のクライアントからも巫女狩りの場面は幾つも出てきています。そこまで徹底して巫女の力を潰したかったのでしょう。彼らにとってはとても都合が悪かったことは間違いないようです。
魂の封印
真由さんの証言
ある日の真由さんのセッションの内容です。将来への不安を解消したいとセッションにいらっしゃいました。彼女も南朝の主要な巫女でした。天河弁財天に一人で向かう姪の紘美に、南側にあるはずの大きな石を見てきて欲しいと言った人です。明らかに何かを知っているようです。催眠状態に導き、前世へと誘導しました。そうすると案の定、重要な場面ができました。
私 「どんな場面が見えますか?」
真由「天河弁財天にいます。敵が来る前に一宇さんの姪の紘美さんと、紘美さんの乳母だった恵美さんと三人で逃げました」
私 「なぜ逃げなくてはいけないの?」
真由「私たちは狙われているみたいです」
私 「なぜ狙われているの?」
真由「違うエネルギーを持っているからです」
私 「違うエネルギーって?」
真由「よくわかりませんが、他の人とは少し違うようです。」
私 「そのあとどうしたの?」
真由「大きいエネルギー体を抱えています。山の中の広場です。自分のエネルギーを丸いものに移しています。私のあとに続いて紘美さんも行うみたいです」
私 「大きいエネルギー体って何?」
真由「私たちの内面にあるような…。宇宙のエネルギーのような…。魂の核…。特別なエネルギーです。」
私 「エネルギーを移すとどうなるの?」
真由「抜け殻のようになります。この能力を持っていると狙われます」
私 「どうしてねらわれる?」
真由「そのエネルギーを欲しがってる人達がいるからです。彼らに渡ると悪用されてしまいます。そうなると取り返しのつかないことになってしまいます。」
私 「取り返しのつかないことって?」
真由「日本全体が…。というよりも、地球全体が大変なことになりそうです。」
私 「その能力を持っている人は何人ぐらいるの?」
真由「私が知る限りでは七名です。その内の私と紘美さんがここにいます。その七人が揃うことで、力が発揮されるような感じです」
私 「そのあとどうした?」
真由「山奥にある神社のような感じです。明け方、火を焚いています。私たちのエネルギーを一旦別のエネルギー体に移して、それを黒曜石に出しました。黒曜石はいっぱいあります。その中の二つに私と紘美さんのエネルギーを入れました。それを一宇さんに渡しました。その時、今僧侶をやってらっしゃる尚子さんもいたような気がします。そのあと一宇さんは熊野に行ったような気がします。」
私 「そのあと真由さんはどうしたの?」
真由「敵に捕まって、殺されました。しかしそれもわかった上でやったのです。別に怖くも苦しくもありません。」
私 「亡くなって魂だけになったあなたは、その後どうしましたか?」
真由「熊野を上空から見ています。一帯が全部燃えています。焼き討ちにあったようです。しかし、村人たちは見当たりません。その前に、避難していたようです。」
先に出てきた田村さんが、村人を逃がしていた場面は、この時のことかもしれません。尚子さんの証言とも一致します。
私 「そこに私はいますか?」
真由「七個の黒曜石を祭壇において護摩炊きをしています。祭壇の前に一宇さん。その後ろに尚子さんを含めて七人ほど並んでいます。さらにその後ろに長峰さんがいます。一宇さんが何かを始めました。黒曜石から空中にエネルギーが出て、北斗七星の並びになったところに、白くて丸い石をかざして印を切りました。印を切ると、一瞬石に印が浮かび上がって、北斗七星の形のエネルギー体が消えました。封印されたようです。」
これも尚子さんの証言と一致します。そして、ここで初めて北斗七星の名前が出てきました。何か重要な事が潜んでいる気がします。
私 「なぜ封印する必要があるの?」
真由「さっきも言ったように、そのエネルギーを利用したい人たちがいて、封印しないとずっと追われ続ける。自分たちが正当な家系であることを証明したくて、権力を持ちたくて、敵方がずっと狙っていた。長峰さんは敵方に命じられて、スパイをしていましたが、それを裏切ってそのエネルギーを自分の物にしようとしていたみたいです。」
私 「封印をした後、そのあとどうなった?」
真由「黒曜石と玉石と籠はどこかに持って行ったようですが、私にはわかりません。」
やはり、何かを封印したようです。しかも、自分たちの魂までも封印する必要があったようなのです。そこまでして守ろうとしたものは、一体何なのでしょう。
前述の吉岡さんや川村さん田村さんの証言にもあるように、何かを命がけで守ろうとしていたようです。自らの魂を封印をしてでも守ろうとしたものは何なのでしょう。
長峰さんの存在
私や姪の紘美を節分祭に誘ってくれた長峰さんが、またここで出てきました。この長峰さんについては、会った時からずっと違和感がありました。天河弁財天につなげてくれたのは彼ですし、節分祭に誘ってくれたのも彼です。さらに、私達が知らないような重要な情報ももたらしてくれます。
しかし、彼と会った時から、真由さんが言うようにスパイのような感じがしていたのです。スパイと言うよりも、封印されたエネルギーを自分が手に入れたくて、私達をその場所まで連れて行き、封印を解かせた後に、横取りしようとしているのではないか。そんな印象を受けるのです。
実は、次のことはこの本に書こうかどうか迷ったのですが、やはり書くことにします。
ある日、長峰さんと長峰さんのお知り合いの重田さんを含めて、数名で天河弁財天に参拝に行った時です。重田さんとは初対面です。「せっかくですから、みんなで集合写真でも撮りましょう。」と言って、長峰さんのデジカメをお借りして、まず私が皆さんを撮ることにしました。
シャッターを押しデジカメのディスプレイを確認すると、とんでもないものが写っていたのです。重田さんの口が耳まで裂けているのです。びっくりしてディスプレイを見つめていると、すぐにその画像は消えました。
異変を感じたのか、重田さんは「あっ、私でしょう?私、写真写り悪いですから。」と言うのです。「え?写真写りが悪いどころではないけどな。」と思いつつも、「あぁ。ごめんなさい。もう一度撮りますね。」と改めてシャッターを押すと、今度は普通に写ってました。一体何があったのか。その画像を確認できたのは、ほんの三秒程度の時間でしたが、はっきり見えたのは間違いありません。
そういえば、この前世療法を始めたすぐの頃(約二十年前)に、ある神社の裏の森をバックに写真を撮ってもらったことがあります。その頃のカメラはまだフイルムを使っていましたので、現像に出しその写真を見ると、バックの森の中に直径一メートルくらいの顔が写っていたのです。それが、口が耳まで裂けている顔なのです。びっくりして、さらによく見ると、普通の顔の大きさで口が裂けた顔が二十個以上も写っていました。
怖くなって、その当時の知り合いの男性の霊能者にみてもらったのですが、彼もその意味がわからず、結局燃やしてしまいました。その存在はいったい何なのか。二十年前から監視されていたのか。
写真の存在と重田さんとは何か関係があるのでしょうか。重田さんとはその後お会いすることもなかったのですが、一体何だったのでしょう。さらに、長峰さんのお陰で重要な情報はもたらされるのですが、一体何者なのか。目的は何なのかがわかりません。念のために一定の距離を置く必要がありそうです。
紘美の証言
姪の紘美のセッションで出てきた前世での出来事です。既に何度もセッションをしていますが、だんだん核心的なものが出てきました。出来事の意味と言っていいのかもしれません。
私 「何が見えている?」
紘美「熊野本宮で儀式を行う直前の場面みたい。私には千里眼というか、意識を飛ばして遠くを見ることが出来ていたみたい。私達にはそういう能力があった。私は儀式を上空から見ている。七人の男性の姿が見える。前の方に真白い服と黒い服を着た人がいる。白い服を着た人が兄ちゃん(姪の紘美は私のこと兄ちゃんと呼びます)。七人の男性の中に同じ族ではない人がいるみたい。その人は心情的にこちらに近いから、仲間に入ることが認められたみたい。多分、僧侶の尚子さんのような気がする。他にも何人かの待がいる。護衛なのか敵なのかよくわからないけど、緊迫した感じ。」
その頃の私達には特殊な能力があったようです。自分の意識を飛ばして遠くの状況を見たり、テレパシーで会話をしたり、様々な能力があったようです。ですから、今の私達から見ると、距離感や時間差が説明できず混乱する時があります。
おそらくこの場面も、紘美の肉体は天河にあり、意識だけを熊野に飛ばしていたと思われます。
私 「何をしようとしているの?」
紘美「そこで決してやるはずではないことを、しようとしているの。ある秘技をしようとしている。そういう秘技があると言うことは知っていたけど、使わないという前提だった。それは、パンドラの箱のような、開けてはいけないもののはずだったのに。」
以前のセッションで言った、黒いエネルギーから純粋なものを守るために使った手段。
Aでもなく、‘Aでもなく、Zの手段のことを言っているのでしょう。さらに紘美は続けます。
紘美「ピラミッドの頂点のような感じで、そこに至るまでの物は使ってきたけども、最後の物は使わないという前提だったはず。今までは、頂点以外の物は、いろんなもの(人、物、火、水、土)の均衡を保つために使ってきた。しかし、頂点にあるエネルギーを使わないために、守るために、結界を張ったりしていた。」
私 「それを使ったの?」
紘美「たぶん。しかし、それを使わなければ、イメージとしたら階層がめちゃくちゃになってしまって、人間が生きていくことが虚像になってしまう。今までの文明が白紙になって虚無になってしまう。それを理解できない勢力が、そのエネルギーを使いたがっていた。頂点のものさえあれば、何でもできると勘違いしている。魔法使いにでもなれるというような、浅はかな考えで奪いたがっている。自分が神になれるとでも思っている。」
確かに過去から古今東西の権力者は、そういう力を欲しがっていたようです。不老不死の生命、魔法使いのような力を欲しがっていたのでしょう。しかしそれを行うと大変なことになります。正しく理解している人が使えば、人々のためになりますが、邪悪な人に渡すと、人を傷付けてしまいます。それが高次元の力であれば、取り返しの付かないことになります。
エネルギーやツールを正しく使うには、正しく使うための人格と技術が必要なのです。それを伴わない人が使うと、取り返しのつかないことになりかねません。それが、当時の巫女が使っていた高次元のエネルギーであればなおさらです。地球のエネルギーそのものが破壊されかねません。
紘美の話はさらに続きます。
紘美「ピラミッドの底辺ができていないのに、それを使おうとしても無理だし、壊れた底辺の上に成り立っているものを、維持しようとしたり、ましてや使おうとするのはやってはいけないこと。間違った使い方をしてしまうのは明らか。その状態で、頂点の物を使えば取り返しがつかなくなる。日本が、いや地球自体が大変なことになる。理解していないものが使うよりは、理解しているものが葬る方が良い。」
私が真名井神社の天之御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ)の依代(よりしろ)の前で感じた「正しいエネルギーを正しく使える世になるまでは使わないと決めた」という感覚と一致します。真由さんも同じ事を言っていました。
私 「それでどうした?」
紘美「しかし、皆もそのエネルギーを葬ると、どうなるかわからない恐怖心の中でやっている。でも、取り返しがつかなくなるよりは、封印した方がはるかに良い。未来に可能性が残せる。その時は必ず来るような気がする。そして、その秘技を使った。時空が二つに別れた。同じような世界が二つある。」
やはり何か大変な事が起きていたようです。今の私達には理解できないことのようです。 SF映画の一場面を見せられているような感じです。しかし、これも間違いなく紘美の記憶の奥底から出てきたものです。
私 「それでどうなった感じがする?」
紘美「思い出せない。その瞬間、意識がなくなったのか。記憶を封印したのか。よくわからない。しかし今現在は、ピラミッドの四合目まで出来上がっている感じ。土台の四割が出来上がった感じがする。」
やはり、何かとてつもないエネルギーを悪用したがっていた者たちがいたようです。魔法使いや神にでもなれると勘違いしていたのでしょう。それを阻止するために、何かを封印したのでしょう。しかし、本当にそのようなことがあったのでしょうか。理解の範囲を越えています。真相は掴めません。
さらに、熊野の林の中の広場の場面が出てきました。
私 「何が見えてる?」
紘美「九人の男性が一帯に結界を張っている。周りに待たちもいる。離れたところにお社はあるけど、集落には村人はいない感じ。そこは半円形の広場みたい。兄ちゃん(私のこと)が手のひらに収まるくらいの白い石を持っている。形が違う石が二つ。九人のお坊さんのような人が一帯に結界を張ってる。お社はあるが集落にも人はいない。半円形の広場。手のひらに収まるくらいの白い石。形が違う物が二つあるみたい。手には卵のような白い石と、首の後ろから笏のような物を出して、胸に差しなおして、石を手に持ってる。」
尚子さんや真由さんの証言と多少のズレはありますが驚くほど一致しています。このときに限ったことではないのですが、同じ時代の前世に誘導する時は、初めに見た人の証言は、後から受ける人には絶対に言わないようにしています。先入観が入ると、正確性に欠けるからです。もちろん紘美にも、真由さんのセッションの内容は言っていません。
私 「そしてどうなった?」
紘美「その瞬間、低い木枠に炎が上がってる。火の前で、石や拍子木のような物を使ってる。火がおさまると儀式は終わり。河原に降りて水浴びをしたあと全員で川上に向かった。お坊さん達?山伏?は毅然としていて、死ぬ覚悟が出来てるみたい。死ぬというよりも、魂を抜いて、魂のエネルギーを温存するような感じ。兄ちゃんは呆然としてる。眼球の色が一色になって生気がなくなっている感じ。白い石に自分を封印したのかもしれない。」
やはり私は、自分自身のことを封印していたようです。天河弁財天の節分祭の後、宗像の神湊の海で思い出した、精気のない私が四人の山伏に守られて、トボトボと山道を歩いていた場面と重なります。ですから、私からは記憶は出てこないのです。そうすることで、封印を確実にしたのでしょう。
例えれば、大切なものを金庫の中に隠し、鍵をかけ暗証番号を設定し、さらにその金庫や鍵の有りかも暗証番号も忘れてしまうというようなことをしたようです。そうすることで封印を確実なものとしたのでしょう。
さらに、個々の証言に微妙なずれがありますが、それは六五〇年も前のことですから、ある程度の記憶違いはあっても仕方ないことと思われます。
私 「その時の俺は、一体どういう立場だったんだろ?」
紘美「それはまだ言ってはいけない気がする」
まだ明らかにしてはいけないものがありそうです。言っている紘美自身も、何を言ってはいけないのかはわからないのです。おそらく、時が来るまでは誰にもわからないようにされているようです。さらに紘美の記憶がよみがえってきました。
紘美「兄ちゃんが儀式をする直前、私は半紙に呪文を書いて息を吹きかけ川に流したみたい。そして、呪文を唱えて黒曜石を舐めたの。自分の持っている神性だけを石にいれ、抜け殻だけで生きていった。その時に、黒曜石の近くに真由ちゃんの存在も感じる。」
紘美の口からも、真由さんの記憶と通じるものが出てきました。やはり、魂の核となるものを黒曜石に封印したようです。彼女たちの魂の核には、どういう意味があるのでしょう。
しかしいずれにしろ、黒曜石に何かを封印したことがわかっただけでも、大きな前進と言っていいのかもしれません。
各地の封印
同じ頃、吉野での巫女狩りや封印以外でも、全国で大変なことが起きていたようです。
月読神社の巫女
クライアントさんたちの証言によれば、南北朝時代には過激な巫女狩りが行われていたようです。沢山の人から、その証言が出てきました。そのうちの一つが、意外な展開からでできました。
以前から私は、長崎県の壱岐島の月読神社がとても気になっていました。一度は行ってみたいと思っていたのです。月読の神は天照大神と姉妹で、同等の関係です。しかし、どういうわけかずっと冷遇されているのが気になっていました。そこで、紘美と紘美の母親と真由さんと私の四人で、壱峻島の月読神社に行くことにしました。
フェリーで二時間ほどの船旅です。現地でレンタカーを借り、まず目的地の月読神社を目指します。そのお社は、小高い丘にありました。お世辞にも立派といえるようなお社ではありません。失礼ですが、物置小屋に張るようなトタンの壁で、天照大御神を祀ってある伊勢神宮とは似ても似つかぬお社です。ネットの写真で、想像していたものの一抹の寂しさを覚えました。
丁寧にお参りをして、壱岐をあとにしました。
そうやって、特別に神社にお参りをすると、その神社にご縁のある方からのセッションの予約が入ってくる場合が多いのです。案の定その三日後、壱岐在住の方から予約が入ってきました。声を聞いた瞬間、巫女のイメージが入ってきました。おそらく、月読神社の巫女さんだったのでしょう。
その一カ月後、彼女がセッションにやってきました。大塚さんといいます。
まず軽く挨拶を済ませ、問診表を書いていただきます。そして、カウンセリングを始める冒頭に、「大塚さんから予約が入ってくる三日前に、実は壱岐の月読神社に言ってきたんですよ。そういう所に行くと、だいたいそこに御縁のある方から予約が入ってくるんです。今回も、予約が入りそうな気がしてたんですが、あなただったんですね」と言うと、彼女は両手で私の腕をいきなり掴み、私の目をまっすぐ見ながら「言うな!言うな!」と低くて迫力のある声で呻くのです。「言うな!言うな!それ以上言うな!」と繰り返すのです。
様々な体験をしてきた私ですが、その時はさすがに鳥肌が立つような恐怖心が湧いてきました。
冷静を装い「何を言ってはいけないの?」と聞くと、彼女は更に「言うな!奴らが来る!奴らが来る!言うな!」と繰り返します。
「誰が来るの?」と更に聞くと、「侍が来る。侍が来る。言うな!」と繰り返すのです。「侍は何をしに来るの?」「殺しに来る。殺しに来る」と恐怖におびえた目で訴えるのです。「誰を殺しに来るの?」「巫女を殺しに来る」と言った瞬間、椅子から崩れ落ちて泣き叫び始めました。
彼女は、催眠にかけるまでもなく、月読神社の一言で記憶が呼び覚まされたようです。泣き叫ぶ彼女を、そのまま横にして落ち着くのを待って前世に誘導しました。
私 「今何が見えてますか?」
大塚「神社の境内にいます。沢山の巫女が並んでいます」
私 「そこで何をしているの?」
大塚「今から修業するための心構えの話をしています」
私 「あなたが話をしているのですか?」
大塚「はいそうです」
私 「あなたは、教育係のような存在ですか?」
大塚「そんな感じです。そこの神社では責任者のような、師匠のような感じです」
私 「修業している巫女さんたちは、何人ぐらいますか?」
大塚「全国からやってきます。常時三十人ぐらいいる感じです」
私 「そこの神社はどこかわかりますか?」
大塚「月読神社です」(涙)
私 「そのあと何かありましたか?」
大塚「怖い。怖い」
私 「怖いの?もう大丈夫だよ。もう済んだ昔のことだから怖がることはないよ。何があったの?」
大塚「侍が来ました。今までも何度か来ています」
私 「何をしに来たの?」
大塚「自分たちの言うことを聞けと言ってくるんです。私はずっと断ってきました。しかし今日はいつもと違います。いきなり巫女達を取り押さえて、目の前で殺し始めました」(号泣)
私 「怖かったね。もう大丈夫だよ。あなたはどうなったの?」
大塚「私も最後に殺されました」
彼女たちも、月読神社で巫女狩りにあっていました。その恐怖心で大塚さんはパニック障害になっていたのです。その時の恐怖心を癒すことで、彼女のパニック障害は快方に向かいました。
このように、主だった神社ではほとんどの巫女が殺されていたようです。具体的な事例を挙げると、あまりにも悲惨なので控えさせていただきます。
権力者にとっては、巫女の持つ能力を自分の物にしたかったのでしょう。思い通りにしたかったのでしょう。
しかし、そのような悲惨な出来事がなぜ記録されていないのか。言い伝えられていないのか。疑問は消えません。沢山のセッションの中で、沢山の方の意識の奥底にある記憶を呼び起こして出てきた内容は、とても偶然の一致とは思えないのです。あまりにもリアルで説得力があります。
このように書くと、ただ悲惨な物語のように感じるかもしれませんが、そうではありません。確かに六五〇年前の出来事は大変でしたが、そこには未来に希望を託した沢山の人々の、強い意志があったのです。
大切な「言えないもの」を守るために自己犠牲を惜しまず、自らの魂をかけて守り抜いたのです。その本当の意味が、徐々に明らかになっていくことになりました。
その後も、様々な証言が出てくる中で、まるでSF映画でも見るような出来事や、山奥から物的証拠が現れたり、当時の人たちが結集し始めたりと、とても現実の世界とは思えない出来事が、立て続けに起きるようになりました。
中には封印していた能力が開き始めた方も沢山います。皆さんの奥に押し込められていた様々な記憶や感情が解放されていくうちに、本来の素晴らしい自分を思い出し、沢山の方の人生の流れが大きく変わり始めました。
さらには、魂をかけるほどの大切な『言えないもの』が徐々に明らかになって行ったのです。
引き続き、第二章をご覧ください。
吉野物語 第一章
2021年8月20日発行
著者:一宇ichiu
フォレスト前世療法研究所代表
長崎県生まれ。
1999年から、福岡にて前世療法を中心としたセッションを始める。
2021年現在で3500人以上のクライアントの問題と向き合う。
現在も独自の手法で福岡、東京、長崎、オンラインでセッションや各種講座等を行う。